Das Kapital

新版 資本論

Das Kapital

新版 資本論

カール・マルクス

日本共産党中央委員会社会科学研究所 監修

全12分冊構成

セット定価23,760円(本体21,600円)

第一部
合計4分冊
第二部
合計3分冊
第三部
合計5分冊

2019年9月より隔月刊。現在12分冊完結

新書版『資本論』完結から30年──。マルクス自身の研究の発展史を余すところなく反映。エンゲルス版の編集上の問題点を解明。画期的内容で初めての新編集版!
 

『資本論』の革命的真髄と、日本共産党の歴史的役割――新版完結によせて

   日本共産党創立99周年記念講演会
   パンデミックと日本共産党の真価   志位和夫委員長の講演から


   新版『資本論』の完結――100周年を迎えるにふさわしい記念碑的な仕事に

ここでうれしい報告があります。日本共産党中央委員会社会科学研究所が監修して刊行してきた新版『資本論』が、ちょうど2週間前、全12冊で完結しました。

この事業は、2004年の第23回党大会での綱領全面改定を受け、2005年から準備を始めたものでした。わが党は、未来社会論をふくむ党綱領路線の達成と、『資本論』の諸命題を研究し、「マルクスが到達した理論的立場をより鮮明にする」という立場で、この事業を進めてきました。この大事業の監修にあたった不破哲三社会科学研究所所長は、一昨年9月の新版『資本論』刊行記念講演のなかで、新版刊行の意義を次のようにのべています。

「今回、発刊する新版『資本論』は、エンゲルスが、資料も時間も十分にもたないなかでおこなった編集事業の労苦に思いを寄せ、その成果を全面的に生かしながら、『資本論』の執筆者であるマルクスの経済学的到達点をより正確に反映するものになったことを確信しています」

21世紀に、マルクスの理論的探究の歴史と到達点をふまえ、その主著『資本論』の新しい翻訳・編集をなしとげた政党は、世界にもほかに例がありません。16年におよぶ大事業となりましたが、マルクス、エンゲルスの事業の継承者として、来年、党創立100周年を迎えるのにふさわしい記念碑的な仕事を成し遂げたと私は考えるものであります。この機会に、新版『資本論』を学び、広く普及するとりくみに挑戦することを、心から訴えるものです。

   「肯定的理解」「必然的没落の理解」――資本主義の生成、発展、没落の法則を明らかに

みなさん。『資本論』の全体をつらぬく根本的立場は、資本主義社会が、永久に続くものではなく、人類の長い歴史のなかでみれば、“一時的、経過的な社会”であることを明らかにしたことにあります。そのことをマルクスは『資本論』第二版への「あと書き」で、次のように表現しています。

「この弁証法は、現存するものの肯定的理解のうちに、同時にまた、その否定、その必然的没落の理解を含み、どの生成した形態をも運動の流れのなかで、したがってまたその経過的な側面からとらえ、なにものによっても威圧されることなく、その本質上批判的であり革命的である」

ここで「現存するもの」といっているのは資本主義社会のことです。

ここでいう「肯定的理解」とは、資本主義が、人類の歴史のなかで、どのような役割を果たし、社会にどのような進歩をもたらしたのか、そのことを理解するということです。

「必然的没落の理解」とは、資本主義社会が、その発展のなかで、どのような矛盾や危機を生み、社会を変革する諸条件をどのようにしてつくりだし、どのような新しい社会に交代するのか、そのことを明らかにするということです。

こうして資本主義社会を、より高度な社会に交代する必然性をもった社会であること、すなわち、その生成、発展、没落の法則を明らかにしたこと、ここにこそ、『資本論』の根本的立場があり、その革命的真髄があります。

もう一点いえば、そのなかで、マルクスが究明していったことは、社会変革は自然には起こらない、社会変革の客観的条件とともに、主体的条件が成熟してはじめて現実のものになるということでした。労働者階級が、長時間労働をはじめとする過酷な搾取から自らの命と暮らしを守るたたかいによって「訓練」され、自分自身の「組織」をかちとり、体制そのものを変革するたたかいを発展させる、そうしてこそ資本主義体制をのりこえて、その先の社会――社会主義・共産主義に進む社会変革は現実のものとなるということでした。

そうした社会変革を進める主体的条件を発展させることにこそ、日本共産党の歴史的役割があります。

みなさん。党創立99周年という節目にあたって、そのことをお互いに胸に刻み、先人たちの不屈の努力と探求に思いをはせ、未来を開く歴史的使命を果たそうではありませんか。

(「しんぶん赤旗」21年8月6日付)


   志位委員長の日本共産党創立99周年記念講演会
「パンデミックと日本共産党の真価」を受けた「赤旗」記者座談会での
「第五章 資本主義をのりこえる未来社会をめざす党」に関する部分から


B なんといっても、この章(上記第五章のこと)のハイライトは、『資本論』の根本的立場がどこにあるのかを解明し、社会変革の主体的条件を発展させる日本共産党の歴史的役割についてズバリ明らかにしたことにある。

D 『資本論』といえば、党中央の社会科学研究所が監修して刊行してきた新版『資本論』が(21年7月に)全12冊で完結したというタイミングだ。2004年の綱領改定を受け翌年から準備を始めて、実に16年にも及ぶ大事業となった。志位さんは、世界にも例がないその業績をたたえたが、誇らしい限りだね。

A 志位さんは“資本主義の肯定的理解のなかに必然的没落の理解を含む”という、『資本論』第2版へのマルクスの「あと書き」の中のテーゼを引用して、『資本論』の革命的真髄を明らかにした。

C ちょっと難しかったけど、マルクスが、『資本論』で解明したのは、資本主義が人類史の中でどのような役割をはたし、社会にどのような進歩をもたらしたか(進歩的理解)、資本主義社会がその発展のなかでどのような矛盾や危機を生み、社会変革の条件をどうつくりだし、どのような新しい社会に交代するのか(必然的没落の理解)ということだね。

B 資本主義の生成・発展の必然性や成果を認めると同時に、資本主義が矛盾を激化させ、やがて没落する法則を明らかにしたのがそのテーゼの真髄だ。

A そのうえで志位さんは、資本主義が没落するといっても、それをのりこえる社会変革は自然には起こらないというのがマルクスの考えで、矛盾がどんなに激化しても、主体的条件の成熟がなければならないと強調した。その主体的条件を発展させることにこそ日本共産党の歴史的役割があると解明した。

B うーん。すごいスケールの話だけど、コロナパンデミックは、資本主義をこのまま続けていいのかという問いかけをもたらし、日本でも世界でも、人々は新しい社会への模索を強めている。その時代にふさわしい、共産党の奮闘が求められているということだね。

(「しんぶん赤旗」21年8月28日付)

 
新版資本論第1分冊

2019年9月
マルクス自身の研究の発展史を余すところなく反映。エンゲルス版の編集上の問題点も克服した、画期的な内容で新編集版を刊行!

新版資本論第1分冊

定価1,870円(本体1,700円)


しんぶん赤旗2019年11月24日掲載

評者 天野光則 千葉商科大学名誉教授

改訂訳・注から「発見」の楽しみも

1980年に社会科学研究所監修・翻訳委員会訳の新書版『資本論』が出版されるようになってから、私は新書版を愛用してきました。50名を超す研究者の集団的英知が結集され、訳注も豊富であるなど『資本論』翻訳史上、画期的なことでした。

このたび、『新版 資本論』(全12分冊)の刊行が始まり、第1分冊を手にしてまず感じたのは、大変読みやすいということでした。旧版の新書版に比べて一回り大きいA5判で、装丁もページの組み方にも工夫がなされています。

新版の改訂作業は社会科学研究所の責任でなされました。特筆されることは、新たに刊行された『マルクス・エンゲルス全集』(『新メガ』)の『資本論』諸草稿の研究をふまえ、訳文、訳語、訳注の全体にわたる改訂がなされていることです。とくに「マルクス自身の研究の発展史と歴史的事項にかんする訳注」が大幅に拡充されます。第1分冊で新たに追加された訳注は、概算で50カ所以上あり、訳語・訳文の改訂も、相当数あります。訳文と訳注の双方を含む好例を紹介します。

第1篇第3章「貨幣または商品流通」の「価値の尺度」の節の中で、商品が実際に金と交換されることによって、その「交換価値」をただの表象から現実に転化する、ということを表すのに「全質変化」という言葉が使われています。これまでは「化身」と訳されてきたものです。新しい訳注では、この言葉は、パンとブドウ酒が司祭の祈りによりキリストの肉と血に実体が変化することを指す「キリスト教神学の用語」だと記し、言葉に込められたマルクスの機知が読み取りやすくなっています。

これは一例ですが、こうした「発見」は読書の楽しみでもあり、続刊を大いに期待するゆえんでもあります。

混迷するこの時代に、『新版 資本論』が新たな時代を切り開く「羅針盤」として広く読まれることを期待します。


 
新版資本論第2分冊

2019年11月
世界で初めての新しい編集として注目を集める新版! 

新版資本論第2分冊

定価1,980円(本体1,800円)


しんぶん赤旗2020年02月02日掲載

評者 片岡克己 北海道労働者学習協会会長

搾取を解明し労働者の闘争描く

マルクス自身が難解だと述べる第1分冊(価値形態論)をのりこえて読みすすむと、第2分冊は資本家と労働者が初めて登場する「貨幣の資本への転化」を経て、『資本論』の核心中の核心「第3篇 絶対的剰余価値の生産」、すなわち資本主義的搾取の解明にすすみます。

生産過程で生みだされるほかはない剰余価値を資本がただ取りする搾取のしくみは、科学的社会主義の経済学を学ぶ以外には理解できません。私は労働学校など学習の場で、そのことを理解した瞬間、労働者仲間の目が輝くのを何度も目にしています。資本主義社会における自らの運命を自覚し、社会変革へ向かう決心があふれ出るのでしょう。ある資本論研究者が「労働者の経済学学習での最高の喜びは、搾取を知ることだ」といわれたことに私も全く同感です。

つづく「第8章 労働日」。労働力商品を手に入れた以上、労働者の健康と寿命になんらの顧慮も払わず無慈悲に労働時間を延長する資本家と、これを標準的な長さに制限しようとする労働者、商品交換の法則のもとで認められる権利と権利のぶつかりあいは総資本家階級と総労働者階級の闘争で決めるしかないと、労働日(労働時間)短縮闘争のきびしい本質を明らかにします。

このあとマルクスは「工場監督官報告書」や「児童労働調査委員会報告」などをよりどころに、「搾取の法的制限のない」時代に始まって、標準労働日を獲得する労働者の闘争、工場立法の成立とその実施を妨害する工場主の策動、工場監督官の奮闘などを生き生きと描きます。ここで示される過酷な労働者の実態は数世紀を越えて日本社会の労働者の実態とも重なります。

旧版の「(資本の攻撃から労働者自らを守る)社会的予防手段」を、「社会的バリケード」に置き換えるなど、随所に訳文を平易にする改訂が加えられ、訳者注も充実されて、読み進む楽しみの一つです。


 
新版資本論第3分冊

2020年1月
マルクスが到達した理論的立場をより鮮明にした『新版』!

新版資本論第3分冊

定価2,200円(本体2,000円)


しんぶん赤旗2020年03月22日掲載

評者 玉川寛治 産業考古学会元会長・現顧問

労働時間短縮の意義、最初の叙述

第4篇「相対的剰余価値の生産」、第5篇「絶対的および相対的剰余価値の生産」、第6篇「労賃」の3篇が収められている第3分冊は、『資本論』の中で、最も躍動的な部分です。第4篇13章「機械と大工業」は、マルクスが自分の目で確かめた、イギリス資本主義の搾取の実態が生々しく描かれています。この章を執筆するにあたって、ロンドンにある大英図書館に通い続け、調査したのです。

「機械と大工業」に引用されている主な文献を示します。

ポッペ『技術学の歴史』、ベックマン『発明の歴史にかんする論集』、ユア『工場哲学』、バビジ『機械および製造業の経済論』、『諸国民の産業』、エンゲルス『イギリスにおける労働者階級の状態』などの本と、『工場監督官報告書』、『児童労働調査委員会報告書』、『公衆衛生にかんする報告書』など政府の報告書です。コピー、ワープロ、スマホ、デジタルカメラのなかった時代に、マルクスが払った努力を想像しながら読むことをお勧めします。

『大英図書館の閲覧室』と題する小冊子に、マルクスは「あらゆる図書館利用者の中で最も有名だったといえるだろう。彼は一八五〇年六月一二日に入館証を交付され、世界の歴史に大きな影響を与えた書籍やパンフレットを書いた。彼の最も有名な労作は『資本論』である」と書かれています。

新版には、多くの魅力的な訳注がつけられています。

「資本主義社会においては、一階級の自由な時間は、大衆のすべての生活時間を労働時間ヘ転化することによって生み出される」(920P)に「未来社会における労働時間短縮の意義についての『資本論』での最初の叙述」と訳注が付されていますが、これはわが国の『資本論』翻訳史上初めての訳注です。

『資本論』は難しいと、ためらっている皆さん、「機械と大工業」から、読み始めませんか。


 
新版資本論第4分冊

2020年3月
資本主義体制の変革の論理を鮮やかに示し、第一部が完結!

新版資本論第4分冊

定価1,980円(本体1,800円)


しんぶん赤旗2020年05月31日掲載

評者 山田博文 群馬大学名誉教授

現代を透徹、資本蓄積の一般法則

この第4分冊は、マルクス存命中に刊行された完成度の高い『資本論』第1巻「第7篇 資本の蓄積過程」の全体、すなわち、第21章・単純再生産、第22章・剰余価値の資本への転化、第23章・資本主義的蓄積の一般的法則、第24章・いわゆる本源的蓄積、第25章・近代的植民理論、を収めている。

本書は読み易さに加え、マルクス自身の研究の発展史と歴史的事項に関する訳注を拡充し、『資本論』成立の背景にも光を当てている。書評の機会に久方ぶりに読み返したが、一つの事象や概念について構造的・多元的角度から分析を深めていくマルクスの「凄さ」には、幾度も驚かされ、感動的ですらある。

大部の『資本論』を読破するのはなかなか困難である。だが、第7篇はそれまでの内容を振り返りつつ、「資本の蓄積過程の単純な基本形態」を描き出しているので、資本主義の本質・運動・構造、さらに資本主義の創生の秘密と没落の必然、といった全体像を手早く把握できる。

153年前、マルクスは「資本主義体制の国際的性格が発展し、…利益を独占する大資本家の数が減少するにつれ、貧困、抑圧、隷属、堕落、搾取の総量が増大する」と指摘した。経済のグローバル化が進展した私たちが目にするのは、少数の多国籍企業・大資本家への富の蓄積であり、残りの99%への貧困の蓄積である。マルクスの理論は現代を透徹する。複雑な経済現象に惑わされやすい現代こそ「資本主義的蓄積の一般的法則」に立ち返る必要があろう。

ただ「一般的法則」の具体的な現れ方は、各国の特殊性(経済社会システム・風俗習慣・国民意識・対外関係など)を反映するので、その特殊性を解明する課題は後世に残されている。

本書は、資本主義のトップランナーのアメリカで、資本主義を疑問視する世論が高まるほど矛盾が深まった時代に、是非とも一読したい、とくに若い方々にお薦めしたい一冊である。


 
新版資本論第5分冊

2020年5月
いよいよ、恐慌論の展開では“本番”にあたる市場経済の分析へ!

新版資本論第5分冊

定価1,870円(本体1,700円)

 
新版資本論第6分冊

2020年7月
資本の循環運動を反復させる周期的過程として深く究明する回転論。

新版資本論第6分冊

定価1,980円(本体1,800円)

 
新版資本論第7分冊

2020年9月
個別資本の運動から、総資本の再生産と流通の分析へ

新版資本論第7分冊

定価1,980円(本体1,800円)


「新版資本論」第二部(第5分冊〜第7分冊)

しんぶん赤旗2020年09月27日掲載

評者 関野秀明 下関市立大学教授

「恐慌の運動」論発見した「第二の革命」の舞台がここに

昨年10月より始まった『資本論(新版)』刊行の最大の意義は、この第二部の最後に収録された「第一草稿」の掲載にあります。ここでマルクスは「恐慌の運動(流通過程の短縮)」論と呼ばれる、金融危機と恐慌を一体の運動として解明する理論を発見しました。

マルクスは、産業「資本家A」が生産した商品W’を「商人」に販売し商業手形を受け取り、この商業手形を「銀行」に割引・買い取ってもらい貨幣G’を手に入れ、この貨幣G’で「次の生産に必要な生産手段と労働力、W」を購入する流通過程W’—G’—Wを分析します。「商人への手形販売」と「銀行の手形割引・現金支払」がなかったら、「資本家A」は、W’が「最終消費者」に売れるまで貨幣G’を入手できず、「次の生産に必要なW」を購入し再生産過程を先へ進めることができません。しかし「商人」と「銀行」の介入により貨幣G’を入手する「時間が先取り」、「流通過程が短縮」可能になるとしています(第7分冊859P)。

そしてマルクスは、「商人への手形販売」と「銀行の手形割引・現金支払」による消費が商業・銀行信用(債権債務関係)による「架空の需要」に基づき、それに沿った過剰な生産と「現実の需要」「最終消費者の消費」との乖離(商人が在庫を抱え銀行に支払延滞)が表面化すると、投げ売り、「全般的な瓦解、恐慌が勃発する」としました(第7分冊860~861P)。

大転換の契機に

この1865年『資本論』第二部第一草稿における「恐慌の運動」論の発見は、マルクスの経済学と革命論を大転換する契機になりました。

1850年『新ライン新聞・評論』においてマルクスは、「新しい革命は新しい恐慌に続いてのみ起こりうる」という「恐慌=革命」論を唱えました。そして61~63年『資本論草稿』において、「利潤率の傾向的低下」が過剰生産恐慌の原因だと考えていました。しかし、57年恐慌は革命にはつながりませんでした。

変革主体の成長

マルクスは、65年に「利潤率の傾向的低下」に代わる「恐慌の運動」論を発見し、同時に新たな革命を必然とする論理、「社会変革の主体的条件・労働者階級の成長」論の構築に向かいます。

それは67年『資本論第一部完成稿』における結論、「貧困、抑圧、隷属、堕落、搾取の総量は増大するが……資本主義的生産過程そのものの機構によって訓練され結合され組織される労働者階級の反抗もまた増大する」(第4分冊1332P)に結実しました。

このように「恐慌の運動(流通過程の短縮)論の発見」は、マルクスの経済学にとって「剰余価値の発見」という「第一の革命」に続く「第二の革命」とも呼べる重大な意義を持ちました。この『資本論第二部(新版)』は「第一草稿の訳出、掲載」「第二篇第16章註32『恐慌の覚え書き』の新訳」等を通じ、「第二の革命」再発見の舞台となっています。


 
新版資本論第8分冊

2020年11月
いよいよ第三部の刊行開始。眼前に展開する資本の現実的運動の諸姿容に迫る。

新版資本論第8分冊

定価2,200円(本体2,000円)


しんぶん赤旗2021年01月24日掲載

評者 今宮謙二 中央大学名誉教授

市場競争下の剰余価値の姿分析

本書には『資本論』第三巻「資本主義的生産の総過程」全七篇のうち第一篇から第三篇までが収められています。これら三篇は『資本論』執筆のなかでもごく初期の草稿です。1883年のマルクス死去後、エンゲルスの編集で第二巻、第三巻が発行されました。マルクスの文章を生かしながら苦心してまとめたエンゲルスの努力で読めるようになったのです。

特に第三巻は乱雑な下書きなど未完成なものが多く残されており、研究者間の論争も数多く行われ、読み進めるに困難ですが、現在の資本主義社会のあり方や限界などを知るうえで多くの教示を得られるのが魅力です。剰余価値の生産・実現は資本主義的生産・流通過程の分析で明らかになりましたが、第三巻は資本の全体的運動の具体的姿、つまり資本家間の市場競争のなかで、剰余価値がどのような形で現れてくるかなどが分析の対象となっています。

その内容は次の通りです。第一篇では資本家の立場からみて剰余価値は投下資本(費用価格)に対する利潤という形で意識されることが解説されています。第二篇は競争下で利潤が平均利潤となり、商品価値が生産価格へ転化することの分析、第三篇では生産力拡大、資本主義経済発展とともに現れる「利潤率の傾向的低下法則」とそれを阻止する諸要因などが解明されています。新版ではマルクスの草稿とエンゲルスの編集との違いなどがくわしく訳注で示されており、『資本論』への理解がより深まるよう工夫されています。

これら三篇で注目したいのは、(1)利潤の原泉は労働の搾取だという事実がみえなくなるとの指摘、(2)リカードゥなど古典学派が証明できなかった「利潤率の傾向的低下法則」を検討し、理論的に解明しようとした点、(3)格差拡大や労働条件悪化をたくらむ資本家活動の具体的な指摘など、現在のあくどい企業経営を行う資本家の原型が見事に示されていることです。


 
新版資本論第9分冊

2021年1月
商業資本、利子生み資本の運動と役割の分析へ

新版資本論第9分冊

定価1,980円(本体1,800円)

 
新版資本論第10分冊

2021年3月
信用論の本論――貨幣資本の蓄積・運動の本格的研究に挑戦する

新版資本論第10分冊

定価1,870円(本体1,700円)


しんぶん赤旗2021年04月18日掲載

評者 萩原伸次郎 横浜国立大学名誉教授

マルクス『新版資本論』第9分冊・第10分冊出版/新しい恐慌論が分離され鮮明に

待望の『新版 資本論』第9分冊、第10分冊が出版されました。「待望」と私がいうのには理由があります。今回の『新版 資本論』の特長は、マルクスがどのように『資本論』を書き、エンゲルスがどのように『資本論』を編集したのかについて、詳しい監修者注が書き込まれ、必要な場合には、マルクスの草稿なども訳して、具体的にその根拠を読者に示していることにあります。

とりわけ、恐慌について1865年前半に書かれた第二部の第一草稿は、恐慌論の新しい解明として、第7分冊の最後に訳出してありますが、この恐慌に対する新しい解明が、この第9分冊、第10分冊に大きくかかわっているのです。新書版『資本論』ではこの点をあまり意識せず、第4篇「商品資本および貨幣資本の商品取引資本および貨幣取引資本への(商人資本への)転化」が、第3篇「利潤率の傾向的下落の法則」の後に、同じ分冊の最後の篇として訳出されていましたが、この第3篇と第4篇は書かれた時期が異なるだけではなく、恐慌現象に対するとらえ方の明確な違いが看取されます。それゆえ、今回の『新版 資本論』では、第3篇と第4篇を、第8分冊と第9分冊とに分離させたことに大きな意味があるのではないかと私には思われます。

構想変更さえも

つまり、恐慌と革命が直結すると考えていた〝古い〟マルクスがエンゲルスの編集によって残ってしまった第3篇と異なって、恐慌論の新しい考えに基づいて書かれた第4篇、第5篇が、今回の第9分冊、第10分冊に当たるからです。ここで重要な点は、新しい恐慌論の発見が従来のマルクスの6部構成のプランに大きな変革をもたらしたことです。はじめは、この第4篇のタイトルは、「商品取引資本と貨幣取引資本。利子と産業利潤(企業利得)とへの利潤の分裂。利子生み資本」だったのですが、この新しい恐慌論の発見は、草稿の執筆途中で構想を変更させ、「利子生み資本」の部分を独立の章(現行の第5篇)とし、この結果、信用問題を『資本論』の構成部分に組み込む道が開かれたのです(『新版 資本論』第9分冊、459㌻を参照)。

「信用制度」論じ

この新しい恐慌論とは、商人資本の介在によって販売が現実の需要から独立化し、その架空の流通関係の拡大とその破綻によって恐慌は起こるという論理です。この論理は、第二部第3篇「社会的総資本の再生産と流通」と関連し、さらには、信用制度とのかかわりなしには論じることはできません。したがって、マルクスは、第5篇において、かつて考察の対象外だった信用制度も論じることになったのです。恐慌論の新しい解明と関連づけて読むというのも、この第9・10分冊のひとつの読み方といえるのかもしれません。


 
新版資本論第11分冊

2021年5月
マルクスの研究は、土地所有と資本主義的地代の解明にすすむ。

新版資本論第11分冊

定価1,980円(本体1,800円)

 
新版資本論第12分冊

2021年7月
マルクスの到達した理論的立場を鮮明にして、新版『資本論』が完結!

新版資本論第12分冊

定価1,870円(本体1,700円)


しんぶん赤旗2021年08月29日掲載

評者 石川康宏 神戸女学院大学教授

配列是正し未来社会論が読み取りやすく

第11・12分冊の出版によって『新版・資本論』の刊行が完了しました。これが新訳でなく新版とされるのは、とりわけエンゲルスによる第二部・第三部編集の適否を詳細に検討し、内容をマルクスの学問的到達点により近づける努力が払われているからです。訳注は時にマルクス自身の研究史にさかのぼり、利用された各草稿の成熟度の相違を立体的に浮かび上がらせるものとなっています。

読み違えを修正

第11分冊には第三部第6篇「超過利潤の地代への転化」が収められました。地代を、借地農場資本家が土地の所有者に「自分の資本を使用することを許された代償」として支払う契約額だとしたマルクスは、それを支払ってもなお手元に平均利潤を残すことのできる「超過利潤」の発生を、土地ごとの生産性の相違にもとづく「差額地代」と生産性の最も低い土地にも生ずる「絶対地代」という二つの問題に分けて究明します。この篇への訳注では「現在の形では途方もないもの」というマルクスによる草稿への自己評価、『資本論』に組み入れる土地所有論の構想を大きく発展させながら執筆に至らなかったその後の事情、差額地代の第二形態の考察が完結していないことの指摘などが特に重要です。

第12分冊には最終の第7篇「諸収入とその源泉」、エンゲルスの「『資本論』第三部への補足と補遺」、人名・文献索引など監修者による付録が収められています。第7篇は『資本論』全三部のしめくくりに当たる箇所ですが、草稿は第一部完成稿の前に書かれたもので、未来社会論、史的唯物論などの重要な究明を個々に含みながらも、最後の章が冒頭で中断されているように、明快なまとまりをもったものにはなっていません。

しかし、新版には大きく手が加えられています。第48章「三位一体的定式」で、エンゲルスが読み違えたマルクスの草稿の配列が是正されているのです。これによって「必然性の国」の上に立つ「自由の国」の拡大という未来社会の大切な特徴づけが読み取りやすくなりました。この修正はエンゲルスが「マルクスのような人には、本人の言葉が聞かれるよう要求する権利」があると「補足と補遺」で書いた精神にもかなうものです。


コロナ禍をきっかけに資本主義を超える社会への関心が高まっています。それに応じて、目前の困難を乗り越える一歩一歩の前進こそが、新しい社会の内実を明らかにし、それを目指す人々の輪を広げ、その社会を担う人間の能力を育むという変革論のリアリティーを、マルクス「本人の言葉」から正しくくみ取ることの必要も増しています。これを機に、あなたも『資本論』に挑戦してみませんか。


日本共産党中央委員会出版局発行 新版『資本論』のすすめ

評者 平野喜一郎 三重大学名誉教授

『新版「資本論」のすすめ』/革命と未来社会への新たな展望

新版『資本論』(新日本出版社)の内容がよくわかる、優れた手引き書です。新版ではこれまでの新書版『資本論』が全面的に改訂されています。新書版との違いは、長年にわたる『資本論』の草稿(MEGAとして出版)の研究が生かされ、マルクスの意図にそった内容に近づいていることです。

元の『資本論』は未完の書です。マルクスが自分の手で完成させたのは第1部だけであって、2部、3部はぼう大な草稿のまま残されました。その編集作業は、エンゲルスの手によってたいへんな悪条件のもとでおこなわれました。なによりも、エンゲルスはその内容について知らされていませんでした。書かれた文字も、マルクスの悪筆のせいでエンゲルス以外には読めないものでした。原稿は叙述の順序どおりの位置にはおかれていません。

それでも高齢で病気がちで目もわるくなったエンゲルスがこの「難行苦行」にとりくみました。そのため、このエンゲルス編『資本論』2部、3部はマルクスの意図したものとは異なる点がありました。新版はマルクスのめざしたものに近づく努力をしています。その際、エンゲルスの払った尽力とかち取った成果が十分に尊重されています。これが本書の特色です。

大きな相違点

新版がこれまでの訳書(エンゲルス版)と内容的に異なる大きな相違点は、恐慌の問題です。

恐慌はなぜおこるか。資本主義のもとでは商品の生産が商品の需要と消費を考慮しないでおこなわれます。生産者と消費者の間に商人が入り、現実の需要と消費から独立して生産がおこなわれます。このことから恐慌がおこる、というのがマルクスの到達点でした。ところが1864年までのマルクスは別の恐慌観をもっていました。利潤率の低下が恐慌を生み、それが革命につながると考えていたのです。「恐慌=革命」という資本主義の自動崩壊論はマルクスの死後も克服されることなく信じられてきました。

新しい視点を

つぎに、新版の画期的な編集は、マルクスの「未来社会論」を適切な場所に移したことです。エンゲルス版ではこの重要な個所が第3巻第48章の「三位一体的定式」の中に埋もれていました。

その未来社会では、みんなが平等に労働し、労働時間を短縮し、自由時間をゆたかにもつ。学習や教養をふかめ、趣味やスポーツにも時間を割き、人間の精神的・肉体的発達が可能になる。そのためには資本主義の下にあっても労働時間の短縮を日々かちとっていかねばならないというのです。資本家は、労働時間を極限まで延長します。また、利潤を無制限に増やすことによって、労働者を貧困に追い込みます。この第1部の基本理論に、2部、3部のあらたな革命論・未来社会論がくわわって、新版『資本論』は革命と未来社会への新たな展望をあたえてくれるでしょう。

これが新版の意義であることを本書『すすめ』はわかりやすく語っています。新書版で読まれた方にも新しい視点を与えてくれることでしょう。


 

6つの特徴

1

新書版完結から30年──『資本論』諸草稿の刊行と研究の発展を踏まえ、エンゲルスによる編集上の問題点も検討し、訳文、訳語、訳注の全体にわたる改訂を行なう。

2

第一部では、マルクスが校閲した初版、第二版との異同、フランス語版にもとづく第三版、第四版の主な改訂箇所を訳注で示す。「独自の資本主義的生産様式」「全体労働者」など、マルクス独自の重要概念について訳語の統一をはかり、歴史的事項にかんする訳注を拡充。

3

第二部では、エンゲルスの編集上の問題点を訳注で示し、必要な場合にはマルクスの草稿を訳出。第三篇第二一章では、訳注で独自の節区分を示し、拡大再生産の表式に到達するまでのマルクスの研究経過をつかめるようにした。また、マルクスが第二部の最後の部分を恐慌理論の解明に充てていたことを考慮し、第二部第一草稿(1865年)に書き込まれた新しい恐慌論の全文を収録。

4

第三部の草稿は、他の草稿よりも早く準備されたもので、マルクスの理論的到達点の前進によって、利潤率低下法則の意義づけ、およびそのもとでの資本主義的生産の必然的没落の展望など、克服済みの見解であることの指摘を要する部分を含んでいる。これらの点に留意し、マルクスの研究の発展とエンゲルスの編集上の問題点なども訳注で示す。第三部第五篇では、本来『資本論』の草稿ではなかった諸章の混入箇所を指摘。第七篇第四八章では、エンゲルスによる原稿配列をマルクスの草稿の順序に組み替える。

5

全三部を通して、マルクス自身の研究の発展史にかんする訳注を大幅に拡充。第12分冊の巻末に、700名をこえる「人名索引」を付す。

6

本文の活字は14Qと読みやすい大きさ(新書判は12Q)。新書判でのハンディさを受け継ぎ、分冊数はマルクスの理論的発展を考慮した内容的区分によって12分冊にした。しっかりとした製本で長期の学習にも適する。(原寸のイメージはこちらからダウンロードできます。印刷設定で紙に合わせないで、原寸100%で印刷してご覧下さい。)

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