次に後藤道夫氏は「貧困・生活困難と新福祉国家づくりの課題」について話しました。まず後藤氏は、貧困世帯の割合が生活保護を受けた場合の最低生計費の全国平均を基準にした場合、1997年の10.4%が2007年には15.0%に、さらにそれに給与所得控除額を加えた基準では、同じく16.3%から22.3%に拡大していること。児童のいる世帯の平均年収が96年の約780万円から、07年には約690万円に低下していること。世帯主が30歳代で、18歳未満の子がいる世帯で、所得が300万円未満が97年の9.4%が07年の13.9%に拡大していることなどを示し、深刻な貧困の広がりを明らかにしました。さらに失業が増えるなか、雇用(失業)保険の受給のない失業者が、全体の8割近くにまでなっていることを示し、日本の失業対策の脆弱さを指摘しました。
さらに後藤氏は、フルタイムで働き、自立して生活する非正規労働者が、97年の約210万人(男女計)から、07年には約430万人(同)に倍加していること。正規雇用でも低所得の男性労働者が特に、30歳代で急増していること。また、悪条件の職に就くことを余儀なくされ、就業しながらよりましな職を探し続ける「半失業」の人々が急増していることをデータをもとに指摘しました。
こうした深刻な現状をどう転換していくかという課題に、後藤氏はフルタイム・期限なしの雇用を基準にすること、最低生計費をこえる最低賃金を設定すること、初等・中等教育や医療・介護、障害者福祉など基礎的・普遍的な社会サービスの提供に対する公的な責任を確立し、その費用は無料化することなどを提起しました。
両氏の講演は、不況や貧困・失業の拡大、地域経済の衰退など日本社会が直面する深刻な現状を直視ししながら、その転換に向けて、「新しい福祉国家」という構想を掲げるもので、その根本には応能負担原則に基づく財政税制の改革、労働市場規制と社会保障の再建が据えられています。
7月の参議院選挙が近づくなか、国民本位の日本の経済、社会の再建に向けた改革のビジョンの探求の場となりました。
5月19、20日、大阪と東京にて学習講演会「新しい福祉国家を実現するために」が開催されました。これは昨年、旬報社から刊行された『新自由主義か 新福祉国家か(民主党政権下の日本の行方)』を受け、著者の渡辺 治、二宮厚美、岡田知弘、後藤道夫の4氏の講演から成るものです。
東京では新宿区の箪笥区民ホールにて、二宮厚美氏と後藤道夫氏による講演が行われました。二宮氏は「財政危機の深刻化と福祉国家財政への転換」と題して、現在の日本に求められる財政政策の課題について話しました。二宮氏は現在の日本が直面する難問として格差貧困に代表される「社会的破局」、世界同時不況のなかの「経済的破綻」、国・自治体を襲う未曽有の「財政危機」の三つを上げ、これを解決する道として「垂直的所得再分配の再構築」を提起しました。これは日本国憲法の財政税制の「必要充足・応能負担原則」に立ち、過剰な資金を抱える大企業・富裕層に応分の負担を課し、所得を低所得層に再分配することにより貧困の縮小と、消費の回復による内需主導の景気回復と、税収の増大をめざすものです。
一方、民主党政権の財政政策には自公政権による構造改革路線に対する国民の批判を受けて、子ども手当の創設や農家への個別所得補償など所得再分配機能の強化が見られるものの、その中身は大企業・富裕層に応能負担を求める垂直的(上から下)なものではなく、扶養控除の廃止に見られるように、庶民の間で所得を移す水平的(ヨコからヨコ)なものとなっていることを指摘しました。
二宮氏は、こうした財政政策により歳入と歳出のバランスが大きく崩れるなか、「財政改革ビジョン」として「社会保障目的税」化による消費税の大幅引き上げと、「地域主権国家」の名による国の地方への支出の大幅な引き下げが狙われており、この点は民主党と自民党の間でも合意が出来ていると話しました。これは多くの国民にとって、税金が増える一方、国や自治体よる行政サービスは縮小されるという「やらずぶったくり」であり、これを正面から国民に提起することが難しいなかで、消費税増税を前面に掲げる「立ち上がれ日本」、公務員たたきをしながら「小さな政府」をねらう「みんなの党」などが生まれ、役割分担をしながら、政界再編をにらみながら参院選に突入しつつあるのが現在の情勢だとされました。
こうした動きに対し、二宮氏は改めて憲法に立ち返り、垂直的な所得の再分配による新たな福祉国家の実現が、国民的に求められる局面にあることを強調されました。(つづく)
「まともに生活できる仕事を! 人間らしく働きたい! 全国青年大集会2010」が16日、東京・明治公園で開催されました。5200人が全国から集まりました。
今回のスローガンは、「ナットクできない 派遣法『改正』!」、そして「とりもどそう! 働くよろこび、生きる希望」です。
午前11時から分科会、午後1時からメイン集会と、マイクの前では、次々と思いを訴える発言が続きました。不当な雇止め、労働現場の実態、奪われる学び…。けれども、こんな現実に、ゼッタイ負けないぞ、という決意が表明されていました。
「貧困・住まい」の分科会で、見覚えがある一人の方が、会場からの発言に手をあげられました。前回、2008年の青年大集会のとき、会場で取材に当たっていた、ある地方新聞の記者の方でした。
この方が、自らの実情を語り始めると、その身上の変化に、ぐさっときました。昨年来、務めていた新聞社が経営難だということを理由に、記者から広告部に配転。そしてこの3月、再度、「退職勧奨」に近い配転を命じられ、気持が折れ、辞表を書いた。以前から、上司のパワハラで相当つらい思いを続けていたとも吐露されておりました。
1年半前の集会時、私も取材していた会場でお会いし、名刺の交換もしたら、後日、この方が集会のことを書かれた、かなり大きな記事の掲載紙を、私の編集部に送っていただきました。その彼が、今は失業保険を受給しながら、見通しのない求職活動中。深刻の度を増す事態の厳しさを、再確認した再会でした。
もう一つ集会で、印象が強かったのは、地方各地で運動が広がり、支え手が大きく広がっていることの「希望」です。メイン集会最後のリレートーク(各地からの発言)でよく示されていました。閉会のあいさつで、「この集会が新たなスタートライン」と強調されましたが、たたかいはさらに勢いを加えて続くことでしょう。
写真は、集会後のアピール・ウォーク。
近年、20代、30代の若者が消費をしないことが注目されています。近頃の若者は車も買わず、お酒も飲まない。海外旅行にも行かず、ブランド品などへの興味も薄いなど、消費不況が深刻化するなか、とりわけ若者世代の消費不振が取り上げられています
こうした状況の要因として、バブル経済崩壊後の「失われた10年、20年」といわれる不況期に10代、20代を過ごした今の若者たちは、消費をすることに全般的に消極的であるという、若者心理からの説明や、そもそも若年層自体が人口のなかで減っているからだというものもあります。
しかし、原因はそれだけなのでしょうか。この問題に関し、第一生命経済研究所の熊野英生氏が「衰退する若者消費の分析」というレポート発表しています。そのなかで、熊野氏は、酒類や外食、交通費、自動車購入など個人消費全体に占める20代、30代の若者の割合が、若年人口割合の縮小を上回って低下傾向に有ることを示しています。そしてこうした事態の背景に、非正規雇用や失業率の高さに見られるように、とりわけ若者の雇用環境が他の年代に比して著しく悪化し、若者世帯の所得が大きく低下してきたことがあることを指摘します(20歳代が世帯主の世帯では2000年から2009年にかけて、年収400−550万円の世帯は39.6%から30.3%になる一方、年収200−350万円の世帯は20.0%から30.0%に増加など)。結論として熊野氏は、このまま若年層の消費不振が続けば、日本経済全体の消費不振、内需の縮小につながるとし、若者の雇用環境を改善するために、正規雇用を増やす必要性を提起しています。
今度の日曜日、5月16日に東京・明治公園で「まともに生活できる仕事を!人間らしく働きたい!」という願いを掲げて青年大集会が行われます。労働者派遣法の抜本改正をめぐる攻防も焦点となるなか、若者が安心して働け、買い物もできる社会の実現に向けて、社会全体で声をあげていかなければなりません。
5月7日、シンポジウム「建設産業における個人請負労働者の権利獲得にむけて」に参加しました。
会場のけんせつプラザ東京に90人の参加者。主催は、建設政策研究所> http://homepage2.nifty.com/kenseiken/を中心に昨年来、議論を続けてきた「個人請負労働者に関する共同研究」でした。
建設関係労組関係者をはじめ、出版、放送、映画関係の労組からも参加があり、業界を超えて、同様な形態、条件で働く「フリーランス」といった人たちが職場に増え、その直面する問題を会場から発言されていました。
報告をうけて、もっとも議論が白熱した点の一つは、「個人請負」と呼ばれる働き方をしている人の「労働者性」をどうとらえるか、でした。
当たり前のように「労働者」と言いますが、法律的にいえば、「労働者」の概念は、労働者保護法制の労働基準法(関連法の最低賃金法、賃金支払確保法)、労働契約法、労働組合法によって、それぞれ既定の中身が違っています。
この法制上な整理については、シンポジストで、本研究会にも参加されている、池添氏が、研究会報告、論文で扱われています。
テーマにかかわる一番の焦点になっていると思われたは、「個人請負」の場合は、労働保護法制の対象としては、グレーゾーンになっていることです。裁判事例では、これらの「労働者性」を否定する判例が多くでています。もちろん労組側は、この不当性を訴えて運動を続けています。
労組の運動、裁判闘争の課題上も大きな論点であり、何よりも労働者としての法的規制からも外れ、未権利で低劣な条件で働く人々が広がっている状況から、さらに議論、研究が必要になっていることを感じて帰ってきました。
当日、会場配布の「資料集」(A4判、142ページ)は、テーマにかかわる主な文献、新聞・雑誌記事が網羅されていました。あわせて、同研究会の「建設産業における個人請負労働者に関する研究会報告書」(2010年4月発行、1000円)もまとめられ、今後に生かすべき成果だと思われます。
(当日のプログラム)
◇基調報告 コーディネーター
坂庭国晴氏 建設政策研究所副理事長
◇シンポジスト
・越智 今日子 氏 NPO法人建設政策研究所理事・研究員
・古澤 一雄 氏 国土交通省全建設労働組合
・池添 弘邦 氏 (独)労働政策研究・研修機構研究員(労働法専攻)
<以下、企画趣旨>
今日、建設産業において個人で仕事を請け負う就業形態が急増しています。しかし、その労働実態は必ずしも正確に認識されておらず、それゆえに労働者としての保護からこぼれてしまっています。この問題について、共同研究会ではさまざまな法律的な観点から1年にわたり検討してきました。その到達点を皆さんと共有するとともに、今後、どのような課題があるのかおおいに議論を深めたいと思います。
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