ロイター通信によるとイギリス政府は6月22日、いわゆる銀行税(銀行のバランスシート〔貸借対照表〕に基づく特別課税)を2011年1月から導入する計画を発表しました。年間約20億ポンド(約2800億円)の税収が見込まれています。オズボーン財務相は「今回の危機は銀行セクターから始まった。銀行の経営失敗で社会全体が多大な負担を被った」「今後、業務上発生する多くのリスクを反映する形で銀行がより適切な資金出資を行うことは、公平であり正しい」と述べています。
さらにドイツは夏に銀行課税法案を閣議にかける方針を明らかにし、フランスは2011年の予算案で銀行課税の詳細を示す方針です。
一方、日本ではこの10年以上、3大メガバンク(三菱東京UFJ、みずほ、三井住友)をはじめとする大銀行は法人税を納めていません。これは不良債権処理で発生した損失を繰り越すことで、課税所得が相殺されるためです。この事実をあげ、日本共産党の志位和夫委員長は「日本の法人税が高すぎる」という財界の主張がまったく事実に反すると、厳しい批判の声をあげています(三大銀行 10年以上 法人税ゼロ「しんぶん赤旗」6月29日付)。
さらに、日本の大銀行は今年3月期の決算でいずれも数千億円という利益をあげながら、中小企業への貸し出しは1兆円を超える規模で減らしています。これだけでも、大企業の負担を減らせば、経済が活性化するという主張の誤りは明白です。
8月号の「世界と日本」欄、桜田氾さんの「銀行の三月期決算」は、日本の銀行の3月期決算を分析し、その社会的責任を問いています。
ギリシャの財政危機をきっかけに、借金をかかえる日本の財政もギリシャのようになるのではという不安の声や、そうならために消費税の増税が必要だという議論が出されています。日本も本当にギリシャのようになってしまうのでしょうか。
この問題に対し、富士通総研の根津利三郎氏はコラムのなかで、日本もギリシャとおなじように多くの借金があることは同じものの、それが外国からか国内からによって影響はまったく異なるとしています。根津氏は、ドイツなどヨーロッパの銀行から借金をしているギリシャは、国民全体の所得から国外へ返済が迫られるのに対し、ほとんどの借金(国債)が国内で所有されている日本では、国が返済するお金は国民の所得として戻り、日本全体として使えるお金は将来にわたり減らないとします。そのため、「日本で起こるであろう問題はギリシャとは異なった性格のものになるし、対応も当然異なってくる。ギリシャは参考にはならない」のです。
もちろん、日本も多くの借金を放置しておけば、やがては借金を外国に頼らなければならなくなるという恐れもあります。年間5兆円にもなる軍事費や3370億円の米軍への「思いやり予算」など歳出・歳入の無駄を正し、財政の健全化に向けた計画的な財政政策が必要となるでしょう。また、景気をよくして歳入自体を増やすこともあります。根津氏も、近年目立つ「企業による過剰貯蓄は配当や賃金の上昇という形で投資家や従業員に配分され、落ち込んだ消費を回復させる」「このような経済全体の体質改善無しには財政の均衡も望むべくも無い」としています。
株主への配当はともかく、やはり落ちこんだ内需・家計を温め、景気をよくして税収を増やすためにも、最低賃金の引き上げや、ワーキングプアを生む派遣労働の抜本的規制、失業保険の拡充など、国民生活を支えるルールの整備が大事になっているのではないでしょうか。消費税の増税がそれに全く反するのは言うまでもありません。
さて、冒頭の「ギリシャ危機」をどう考えるか? 7月8日発売の本誌8月号で相沢幸悦さん(埼玉大学教授)と今宮謙二さん(中央大学名誉教授)が対談し、その原因や対策など多角的に論じています。ご期待ください。
政府は18日、「新成長戦略〜『元気な日本』復活のシナリオ〜」を閣議決定しました。この「戦略」では、「日本に立地する企業の競争力強化と外資系企業の立地促進のため、法人実効税率を主要国並みに引き下げる」とし、これにより「日本に立地する企業の競争力を向上させ、雇用増につなげる」などとしています。また、「主要国並みの法人税率」とは25%程度と報じられています。
しかし、本当に法人税の引き下げは経済の成長につながるのでしょうか。このほどロイター通信が資本金10億円以上の400社(金融除く)に行なったアンケートによる「ロイター企業調査」では、企業の成長を阻害している最大の要因として「需要不足」が43%と最も多く、次に「デフレによる収益伸びや悩み」が21%となっています。一方、「法人税率の高さ」を成長を阻害する最大の要因として選択する企業はありませんでした。
この結果をロイターは、「景気低迷や少子化などに伴う国内市場規模の縮小、海外移転による産業空洞化、設備投資低迷などを背景に、企業にとっては『需要不足』が最大の成長阻害要因となっている」と分析しています。
政府の「成長戦略」でも、この間の日本経済の停滞の要因として「需要面の制約」を指摘し、医療・介護などの社会保障の改革、アジア市場の拡大などによって需要の増大を図るとしています。しかし、大企業の内部留保が97年の142兆円から07年には229兆円に急増する一方、同じ時期に労働者の雇用者報酬は279兆円から253兆円にまで減り、内需・家計がやせ細り、需要が縮小したという肝心な点の分析はありません。さらに菅首相は消費税の増税のために超党派の「財政健全化検討会議」をよびかけ、自民党が参院選で公約した「消費税10%」を「参考にする」としています。もし、消費税の増税をすれば内需を一層冷え込ませ、企業の経営も深刻化するのは明らかです。
参院選では雇用と社会保障を立て直し、中小企業、農林水産業を振興し、内需を拡大させて日本経済を健全な発展の道にのせるのか、消費税増税・法人税減税で国民生活を破壊するのかが、いよいよ大きな争点となってきました。
7月号がもうすぐ店頭に出ます。
今号は、大企業研究の特集と、下請問題、経済危機といった、焦点を深く掘り下げる論稿が満載。
★特集「大企業の支配と日本経済」。大企業の異常な利益膨張の背景にある、労働者・国民、中小企業への「支配」の問題をとりあげます。賃金・処遇制度、非正規労働問題など、矛盾の広がりを、職場の具体的な現状から。
★輸出依存型の経済構造の歴史的な形成、変化を解明する工藤昌宏氏。
大量の欠陥車は生んだトヨタの拡大戦略の落とし穴をさぐる、丸山惠也氏。
そして「金融危機」を再検討し、「恐慌」か「金融恐慌」か? 世界経済危機の性格を論じた大槻久志氏など、今号も読みごたえある力作論文あり。
★ルクス君は、会社を視察ちゅう。
以下、主な今号です。
6月2日、東京都・渋谷区役所の憲法記念事業として行われた「フィンランド共和国大使による講演会」を聞きました。
講演者は、昨年9月から着任された、フィンランド共和国特命全権大使、ヤリ・グスタフソン氏でした。(氏の就任あいさつはこちら)
1時間の講演、その後、30分の会場との質疑応答のなかで、とくに印象に残った教育制度の面について、紹介します。
大使は、フィンランドのめざす「3つのT」――Technology(技術),Talent(才能),Tolerance(許容)をあげました。国として、推進力となっているのが、教育の力だということです。
たびたひ国際比較でみたフィンランドの学力の高さがとりあげられますが、その理由は、教育制度にあります。男女、経済的地位、どの地方に住んでいても、徹底した同レベルの教育を保障すること。そのため、学費はすべての段階で無料。
お話のなかでも注目したことは、教員、教師の役割の重視です。全体として、教師への社会的地位が高く、俸給も高い。若い世代にとって、とくに小学校教師は、一番のあこがれの職業で、教職課程の入学には、待ちが出るほど人気が高いと紹介がありました。
また最後の質疑のなかで出た点では、フィンランドの学校教育で他の国との違いを聞かれて、大使は、一人ひとりの子どもが、自分の考え方をもつことを重要視している点をあげました。
教室の前で、一人の発表をする場合も、子どもたちが、自分ではどう考えるか、クリティカルに聞くことを、求めていると話していました。
日本の学力、学校問題との関係で、フィンランドの対象的な例を聞く機会も増えましたが、教育に対する理念をふまえ、さらに見聞を広げる必要がある気がします。
最近のコメント