日産、ゴーンさんの役員報酬額、8億9000万円が取りざたされましたが、今回、3月決算で、上場企業の役員報酬の個別開示が始まり、そのデータにもとづいて、『エコノミスト』7月20日号の企画「役員報酬のさじ加減」(毎日新聞社発行)で扱っています。
「1億円超え」の役員が、全体で221人。このデータから、たとえば、「役員報酬と従業員給与との格差ランキング」(29ページ)を計算しています。これは、役員報酬額を従業員平均給与で割ったもの。上位50社でみると、最高が、やはり日産の142倍。平均は、23・0倍。
記事の中では、「下げ続ける賃金と上昇する役員報酬」という見出しで、高報酬が従業員賃金を切り下げた結果である、という分析を書いています。
「第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミストが法人企業統計を基に大企業(金融と保険を除く資本金10億円以上)の役員報酬と従業員の賃金動向を調べたところ、08年まで右肩上がりを続けた役員報酬に対して、従業員賃金は06年度以降、急減していることが分かった(図2)
東証1部上場企業の10年3月期決算は、売り上げが前期比10%削減少するなかで、逆に経常利益では経常利益は78%増益となった。最終利益ベースでみれば、09年3月期の2・5兆円の赤字から一転、10年3月期は9・3兆円の黒字である。原油価格の下落など変動費の減少と合わせ、人件費はじめ固定費を切り詰めてひねり出した利益だ。」(21ページ)
また個別報酬の開示することの重要性について、森岡孝二・関西大学教授がインタビューに答えています。
15日、「軍事費削って、くらしと福祉・教育の充実を 国民大運動実行委員会」が開いた学習交流集会、渡辺治さん(一橋大名誉教授)の講演「参議員選挙後の情勢と構造改革をめぐって」を聞きました。
「菅内閣発足・参院選後の情勢と財政のあり方を考える」という打ち出しに、全労連会館ホールには、予定を100人上回る250人が詰めかけました。質疑・応答もふくめ、1時間50分の講演でしたが、参加者は集中して聞き入っていました。
まず、「参院選の結果をどう見るか」ですが、その一つは、渡辺さんが、民主党・自民党、保守2大政党の得票率を合わせた、「7割の壁」がどう動いたかです。
本誌2010年1月号で、品川正治さんとの対談「いま、新しい国のかたちを問う」でも指摘されていましたが、2003年の総選挙以降、選挙のたびに、自民・民主の票は、約7割となっています。
それが、今回の参院選では、保守二大政党(自民、民主)の寡占率が56%へ低下しました。
民主党は、前回09年総選挙の42%から、今回32%に。
自民党も、昨年の26%から、今回24%に減らしました。
しかしその吸収先は、「みんなの党」という保守政党であり、保守総体の率は、前回75.2%から、75・9%へと微増したという結果でした。
では「消費税増税反対」「普天間基地撤去」をもっとも明確に掲げた共産党、それに社民党の後退はなぜだったか。渡辺さんはその理由として、消費税は上がらない方がいいが、消費税なしで財政は破綻しないか、という疑問、また沖縄から基地を撤去してほしいが、では日米同盟を解消して日本の安全は守れるのかという、広い有権者の疑問に納得するには至っていないという点をあげました。
そして次の「菅政権をどうみるか」の点では、菅政権が、単なる保守回帰にとどまらず、「日米軍事同盟の深化」でも、大企業減税でも、国会改革でも、これまで以上に、支配階級の宿願を露骨に達成することをめざす「反動政権」であること。
では、「新しい政治を第二歩にすすめるためにどうするか」では、自民党利益誘導型でもない、構造改革政治でもない対抗構想を明確に打ち出すこと。とくに新福祉国家をささえる財政、税制システムと福祉国家経済の輪郭を、国民的な運動の中でつくりあげることの強調しました。
本誌もその「対抗構想」づくりの一端に貢献できるよう、力を入れていきます。
選挙前から急浮上した、大企業減税が問題。選挙戦の論争でも、大きな焦点となってきました。
本誌では、大企業優遇税制について、これまでも様々、企画出て取り上げてきました。直近では、
〔2007年4月号〕特集●徹底分析 大企業優遇税制
〔2009年3月号〕垣内亮「大企業・大資産家優遇税制の転換を」(特集・内需型経済へ 経済危機打開の方途)
また、2010年2月号の【討論】「巨額の政府債務をどうみるか」(出席=岩波一寛、安藤実、垣内亮)では、財務省などの累積債務を口実にした増税論に対し、「財政赤字の原因はどこにあるか」「民主党政権の財政政策の問題点」などについて、議論をしています。
このうち、09年3月号の垣内論文の後半の本文を紹介したいと思います。
菅首相は、「失われた20年」を問題にしていますが、ここでの試算では、九八年以降の一〇年間の大企業減税は、年間五兆円規模になっています。
こうした大企業応援策が、経済を強くしたとは、とても言えないことは、過去の事態ですでに明らかではないでしょうか。
(以下、垣内亮論文より。本誌〇九年三月号、33〜39ページ)
7月5日付の「日本経済新聞」(夕刊)は、2010年3月期末時点で上場企業の47%(過去最高)が有利子負債より手元資金が多い「実質無借金企業」になっていると報じました。同記事によると、08年の金融危機以降、企業が投資を控え、手元資金の確保を最優先したことが背景にあるとされています。この結果、企業の手元資金は過去最高水準の65兆円に達しているとしています。こうした資金は成長の見込める海外に投資され、国内での投資は低調。「企業が貯蓄する資金の有効活用は政策的にも課題となりそうだ」と結ばれています。
一方、イギリスの「エコノミスト」誌(7月3日号)は「現金を貯め込む企業:カネを使え!」(原題はCampanies’ cash piles Show us the money)という記事を掲載しています。同記事は欧米の企業を分析し、例えばイギリスの企業は昨年、GDPの8%に上る貯蓄超過を記録するなど、多額の貯蓄が企業部門に貯め込まれていることを指摘しています。さらにこうした状況について、「民間部門がこのまま熱心に貯蓄を続けていけば、景気が二番底に陥るリスクが高まる」とし、財政危機が喧伝されるなか「企業が財布の紐を緩めて労働者を採用したり投資したりすれば、政府にも債務を圧縮する余地が生まれるはずだ」としています。
日本では、消費税の増税と合わせて経済活性化のために法人税の引き下げ論が言われています。しかし、それでは莫大な資金を貯め込む企業の貯蓄をさらに増やすだけで、景気の拡大はまねきません。景気回復、財政再建のためにも、企業の過剰な貯蓄をどのように社会に還元していくのかこそ、問われています。
8月号の特集は「中小企業を経済の根幹に」です。企業数の99.7%、労働者の約7割が働く中小企業ですが、大企業優先の政治が続くなかで、経営の困難に直面しています。中小企業を経済の根幹と位置づけて、本格的な振興に乗り出さなければ、日本経済の再生と健全な発展もありません。
6月28日、中小企業基盤整備機構による中小企業景況調査(2010年4‐6月期)が発表されました。調査によると、全産業の業況判断DI(業況が「良い」とする企業数から「悪い」とする企業数を引いた指数、前期比)は▲(マイナス)30.8、製造業では▲19.3、非製造業では▲34.7となり、いずれも5期連続でマイナス幅が縮小しました。
業種別にみると製造業では輸送用機械器具で▲2.7、前期比で11.3の改善を示し、輸出の改善の影響が見られる一方、製造業では化学、家具・装飾品、非製造業では建設業でマイナス幅が拡大し、小売業も▲40.7と大幅なマイナスが続いています。機構もこうした結果に対し、「中小企業の業況は、引き続き持ち直しの動きが見られるものの、弱い動きを示した業種もあるなど、依然として厳しい状況にある」としています。
また、原材料・商品仕入単価DI(「上昇」−「低下」、前年同期比)が10.8と大幅に上昇する一方、売上単価・客単価DI(同前)は依然としてマイナス傾向にあり、コストが増えるなかで売り上げが増えない状況となっています。さらに経営上の問題点では、各業種で引き続き需要の停滞が一位(建設業では官公需と民需の停滞が上位)を占めています。
中小企業の経営をよくするためにも、内需の拡大が第一に求められることが見えてきます。
最近のコメント