
白く大きく、美しい姿から、海の女王とよばれる海鳥、オキノタユウ。人間にアホウドリというひどい名前をつけられ、数百万羽もいたのに絶滅寸前にまで追い込まれた鳥を助けたい。その想いで50羽から5000羽へと奇跡の復活を成し遂げた研究者の40年とは? 科学的な見通しと多くの人の支えが生みだした物語です。
目次や構成
もくじ
- 第1部 オキノタユウの過去、現在、未来
- 第1章 鳥島での乱獲ーー数百万羽が数十羽に
- 失礼な名前〝アホウドリ〟
- 雪が積もったように見えた南の島
- 鳥島の開拓
- 鳥島の再開発
- 保護の取り組み
- コラム 山田信夫博士「鳥島にて」
- 鳥島が再び噴火
- 「絶滅」宣言
- 第2章 保護ーー数十羽から5000羽に
- 再発見
- コラム 山本正司さん「アホウドリ再発見の思い出」
- 最初期の保護活動
- 気象観測所の閉鎖
- オキノタユウとの出会い
- もう一つの出会い
- コラム ランス・ティッケル博士「海洋鳥類学の先駆者」
- 初めて鳥島へ
- 初上陸
- 緊急事態
- 保護研究に進む
- つらく暗い日々がつづく
- 調査が軌道に乗る
- 積極的保護の始まり
- 再び緊急事態
- 〝バブル〟の恩恵
- デコイ作戦の準備
- デコイ作戦の考え方
- デコイ作戦開始
- 大規模砂防工事
- デコイ作戦の成功
- 足踏みした8年間
- 新営巣地ができた
- 燕崎断崖上にも新営巣地
- 鳥島火山の噴火
- 小笠原諸島への再導入計画
- 従来営巣地保全管理の保管作業
- 鳥島の3カ所で営巣
- 小笠原再導入の準備と実施
- ついに5000羽に到達
- 繁殖つがい数が1000組を超えた
- 鳥島集団の再生
- 鳥島集団の将来
- 第3章 尖閣諸島とハワイ諸島
- 尖閣諸島でも乱獲
- コラム 多田武一さん「昭和14年の尖閣諸島訪問」
- 再発見
- 鳥島が再び噴火
- 個体数が増え、営巣分布域が広がる
- 繁殖期のちがい
- 尖閣諸島集団の現在
- 二つの繁殖集団の遺伝学的関係
- 北西ハワイ諸島
- ミッドウェー環礁で初めての繁殖
- 第2部 オキノタユウという島
- 第4章 大海原に生きる
- 海の女王
- 19世紀の海洋分布域
- せまくなった海洋分布域
- ふえた観察例、戻ってきた海洋分布域
- 第5章 オキノタユウの生活
- その一年
- 繁殖地にもどる
- 後尾と産卵
- 長い抱卵期間とふ化
- ひなの保育
- 巣立ち
- 渡りの旅
- その一生
- 生まれた島に帰る
- 繁殖開始
- 年齢にともなう体色の変化
- 換羽(かんう)
- 生き残り率
- 海の汚染
- 油汚染
- プラスチック類による汚染
- 苦境に立つ海鳥類
- 世界のオキノタユウ類の受難
- 漁業による混獲とそれへの対応
- 海洋での保護
- 現場での研究
- 生物多様性への危機
- 絶滅危惧種を救い、自然を守る
- あとがき
- 地球2周半の航海
- 調査に費やした2680日
- 「アホウドリ基金」
- 付録
- 参考文献・資料
著者情報
長谷川博
1948年静岡県生まれ。東邦大学理学部教授(動物生態学研究室)。京都大学農学部卒、京大大学院理学研究科博士課程単位取得退学。日本学士院エジンバラ公賞など受賞多数。著書に『とべ あほうどり』(新日本出版社)『風にのれ! アホウドリ』(フレーベル館)など多数。

アホウドリからオキノタユウへ
定価1,650円
(本体1,500円)
2020年4月