
わたしたち人間は、生き物の命を食べて生きている――
ジャージー牛のサンちゃん
佐和みずえ=作
ここは牛の放牧場・宝牧舎。七十頭の牛がいます。一頭の子牛が近づいてきました。ジャージー牛のサンちゃんです。オスだったため、生まれてすぐに処分される運命にあったのですが、宝牧舎に引き取られました。「いずれ食肉になる牛たちですが、生きている間は幸せでいてほしい」――オーナー・竜馬さんの願いです。
目次や構成
家族みんなで読みたい!ノンフィクション児童書
牛(ウシ)と人の幸せを考える牧場とそれを支える様々な人たちの一生懸命で心が温かくなる物語。
サンちゃんはお乳が出ないオスの牛。「ミルクが出なくても、いずれ食肉になろうとも、生きている間は幸せでいてほしい。」そんな想いを胸に、サラリーマンだった竜馬さんと看護師だった加奈さんが夫婦ではじめた宝牧舎。その牧場を中心に、酪農家、お肉屋さん、野菜農家、レストランの料理人など、さまざまな人々がつながってサンちゃんの幸せを考えてくれています。そこには、命のつながりと食べることの大切さがあふれています。そう、「ありがとう」って感謝の気持ちを伝えたくなるお話しです。
<小学校中学年~ご家族>
アニマルウェルフェア& 食と生命に敬意を & 自然との共存
物語に登場!大分県別府市にある「宝牧舎」(ほうぼくしゃ)って?
宝牧舎は、「牛たちの幸せを第一に考える牧場」です。
私たちは、牛たちをただの家畜としてではなく、一頭一頭を大切な存在として扱い、できるだけ自然に近い環境で育てています。みなさんは「家畜福祉(アニマルウェルフェア)」という言葉を聞いたことがありますか?これは、牛たちが生まれてから亡くなるまで、心も体も健康でいられるように配慮する考え方です。私たちが普段何気なく飲む牛乳や食卓に並ぶ牛肉は、母牛や子牛たちのおかげで成り立っています。だからこそ、食べる時には「ありがとう」と「いただきます」の気持ちを忘れずに伝えたいですね。日本の畜産業は大量生産・大量消費が基本で、環境問題や家畜福祉の面でさまざまな課題を抱えています。実は、日本の家畜福祉の基準は世界でも最低レベルと言われているのです。その結果、最近は肉を食べないヴィーガンの方々も増えてきています。そんな中、宝牧舎ではジャージー牛などの廃用家畜を、自然放牧という形で育て、すべての生命が尊重される「ワンウェルフェア」な社会を目指して活動しています。みなさんにも、食べることの喜びや、命を大切にすることの意味を感じていただけたらうれしいです。

文中に登場する「宝牧舎」のHPです。
<目次>
- 1 はじめまして、サンちゃん
- 2 牛の幸せ?
- 3 竜馬さんと加奈さんの一日
- 4 SOS!
- 5 牛と人間のあゆみ
- 6 農家の思い
- 7 ジャージー牛を料理する
- 8 ふたりの夢と動物福祉
おわりに
あとがき
はじめに
著者情報
佐和みずえ
愛媛県生まれの一卵性双生児。それぞれ愛媛県と大分県に在住。講談社の少女漫画誌で原作者としてデビュー後、執筆活動に入る。ノンフィクションの著作に、『チョコレート物語――一粒のおくり物を伝えた男』(2018年、くもん出版)、『山の子テンちゃん――空から落ちてきた小さないのち』(2018年、汐文社)、『すくすく育て、子ダヌキポンタ――小さな命が教えてくれたこと』(2017年、学研)、『走る動物病院』(2013年、汐文社)などがある。

ジャージー牛のサンちゃん
定価1,540円
(本体1,400円)
2024年10月