
過酷な左遷を乗り越えさせたものは何か?人間の真実を問う書
自然に生きて
小倉寛太郎=著
小説『沈まぬ太陽』の主人公・恩地元の原型といわれる著者が,波瀾にとんだ人生から何を感じ,何を学びとったのか。小説には書かれなかったその歩みをユーモアたっぷりに語る。戦争や野生動物のリアルな話のなかに,人間の真実を問う書。
目次や構成
[目次]
- まえがき
- (一) 『沈まぬ太陽』ゼロ巻からのわたしの歩み
- 『沈まぬ太陽』とわたし
"わたしが小説の題材になるとは思いません"/「憎まれても正論を書きたい」/小説と事実の違い/「香典原稿」になった出版秘話
- 軍国少年として育ったなかで
日本を覆った戦争という暗黒/中学校時代の軍事教練/狂気の特攻戦術の採用/従兄二人は人間魚雷と特攻機で戦死/甲府中学で木製特攻機づくり/配属将校と担当教員の酒宴や農作物の持ち帰り/アメリカなどの連合軍はどうだったか
- 敗戦と目覚め
無条件降伏勧告からの二十一日/もう再び騙されまい/軍国主義的教員排除の大ストライキ/消去法での大学入学
- 就職と労組結成
- 航空会社入社、執行委員に
「いかにも浪花節的だ」/日航の労働組合
- わたしが学んだこと
父親の教え/体験から学んだこと
- 東アフリカで学んだこと
- 定年後の生き方
被害や迫害を受けて良かったか/夫婦の人生
- 『沈まぬ太陽』とわたし
- (二) 人に何が求められているのか
- 繰り返させるな悲惨な戦争―平和について―
野生生物は仲間を殺さないのが原則/人の苦悶の表情をイメージできない異常さ/儲けの手段に戦争を起こす/矛盾だらけの「開発援助」/言論を封殺しつくした軍部/煽られた戦争賛美/思い上がった戦争の推進/戦争に反対する人たちがいた/無謀を極めた特攻隊作戦/第三の占領を許してはならない/民主的発言の保持拡大を
- 労使には緊張関係も必要―"働く"ということについて―
労働組合は経営の目付役も/余裕とユーモアと、ふてぶてしさ/one of themで仕事をするな/仲間意識を大切にし、人間性の回復を―バッファローであるべきか、ヌーであるべきか/借衣装だけの人生やめよう
- 地球は人類の占有物か―人類と環境について―
東アフリカの魔力/気候温和なケニア/人類だけが特別なのか/人類の歴史は"一分十四秒"/人類は「進化」したか/森を出たサル/人類は"隙間動物"/"隙間動物"の憂うつ/「保護」とは思い上がった言い方/自動ドアに慣れすぎた日本人/挨拶行動の欠如/過密の産物は?/人類に地球破壊の権利なし
- 繰り返させるな悲惨な戦争―平和について―
- (付) アンボセリの自然
キリマンジャロ山/湿地化と砂漠化/狭められた楽園/ゾウの楽園?/その未来はあるか?
著者情報
小倉寛太郎
1930年生まれ。2002年没。東京大学法学部卒業。元日航労組委員長。日本航空に入社後10年間カラチ、テヘラン、ナイロビと海外勤務。帰国後本社でアフリカ関係担当、御巣鷹山事故のあと再びナイロビ支店長、その後本社会長室部長、1990年アフリカ調査開発部長を最後に退職。ベストセラー小説『沈まぬ太陽』(山崎豊子著)の主人公・恩地元(おんちはじめ)の原型として有名。 1976年、戸川幸夫、田中光常、羽仁進、渥美清、小原秀雄、渡辺貞夫、八千草薫、増井光子、岩合光昭の諸氏らと「サバンナクラブ」を結成。会長代行兼事務局長を務めた。著書に、『フィールドガイド・アフリカ野生動物』(講談社ブルーバックス、1994年)、『東アフリカの鳥』(文一総合出版、1998年)、『企業と人間――そしてアフリカへ』(共著、岩波ブックレット、2000年)、写真集『アフリカの風――サバンナ・生命の日々』(新潮社、2000年)、『自然に生きて』(新日本出版社、2002年)などのほか、共著書、共編著多数。

自然に生きて
定価1,650円
(本体1,500円)
2002年1月