
希望の見えない貧困、グローバル競争に翻ろうされる苦悩、新しい草の根住民自治の模索――世界の圧倒的多数を占める途上国の現状と、人々に困難をもたらしてきた新自由主義からの脱却の道を探る。ブラジルなどでの豊かな実地経験と理論を凝縮。日本も深くかかわる世界がここにある。
目次や構成
〔目次〕
- 第1章 学び、考え始める前に
- 1 右往左往した初めての海外渡航
- 2 「何がわからないか」をわかるには
- 3 「途上国」の範囲って、どこ?
- 4 実は経済学的な定義は難しい
- 5 スタンダードかカスタマイズか
- 6 この本のくみたてと特徴を一言
- 第2章 途上国経済の実態―穴に落とされた人々
- 1 南北格差と一言に言うが・・・・・・
- 2 歪みを知るには中所得国を
- [1] ある程度の工業化
- [2] 不十分に自立して
- [3] 経済の構造の中にある歪み
- 3 グローバル化でよりきびしく
- [1] 金融市場と途上国の庶民の人生
- [2] 出稼ぎ、引き抜き―労働市場
- [3] 「新国際分業」のマイナス面
- [4] 「ワシントン・コンセンサス」
- 第3章 開発経済学って何なのか
- 1 市場とはどういうものか
- [1] 手料理がコンビニに
- [2] モノの交換はなぜできる
- [3] 「新古典派」のエッセンスを知っておく
- 2 市場の失敗と政府の失敗を乗りこえるには
- [1] 流れている「血液」が問題だ
- [2] 競争原理ではだめな一例
- 3 失敗した改革を繰り返している日本
- 4 人間開発と維持可能な発展のために
- [1] 「カネがすべてではない」をつきつめる
- [2] 置かれた「状況」に左右される「自由」、「機能」
- [3] だれをどう支援するのか
- [4] 人が「権原」を失う原因
- [5] 21世紀の開発理念
- 5 「大きな政府で」でも「小さな政府」でもなく「良い政府」を
- [1] 『熱帯地方の良い政府』
- [2] ゆ着構造を壊すために
- [3] 「透明な政府」へ
- 1 市場とはどういうものか
- 第4章 一国を深く知る―現実から見えてくるもの
- 1 変化しているブラジル経済
- [1] 全体をながめてみると・・・・・・
- [2] サンパウロやリオへの「集中」の度合いが減った
- [3] 劇的変化の三つの要因
- 2 工場の地方転移 その1―製靴産業の場合
- [1] ブラジルの靴産業
- [2] 送り出す側の状況
- [3] 工場を受け入れた側―ノルデステ地方
- 3 工場の地方移転 その2―自動車産業の場合
- 4 「内発的発展」という可能性―セアラ州の例から
- [1] 零細・中小企業のネットワーク
- [2] 公務労働を変えた「意欲」
- 5 注目を集める「参加型予算」という仕組み
- 1 変化しているブラジル経済
- 第5章 日本と途上国のかかわり
- 1 切っても切れない関係
- 2 環境保全と市場経済は対立しがち
- [1] 地球の大地をふみつけるということ
- [2] 公害の輸出を正当化する理論
- 3 援助から国際協力へ
- [1] 先進国の「援助疲れ」
- [2] 日本のODA、これまでと現在
- [2] 援助のあり方について、四つの論点
- 終章
- あとがき
- 参考文献
- 詳しく知ろう
- 途上国の風景
- キーワード
- クイズ
著者情報
山崎圭一
1962年大阪府生まれ。横浜国立大学経済学部教授。大阪外国語大学卒業、大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程単位取得退学。日本・ラテンアメリカ政経学界、日本財政学会に所属。内橋克人・佐野誠編『ラテン・アメリカは警告する――「構造改革」日本の未来』(新評論)、堀坂浩太郎編著『ブラジル新時代――変革の軌跡と労働者政権の挑戦』(勁草書房)、紺井博則・上川孝夫編著『グローバリゼーションと国際通貨』(日本経済評論社)

リオのビーチから経済学 市場万能主義との決別
定価1,760円
(本体1,600円)
2006年3月