
「低学力」「希薄な人間関係」などと指摘されて久しい大学生。それは彼・彼女たちの真実なのか。文部科学省ペースで進む「大学改革」は、学生の自己形成にどんな意味を持つのか――常に学生たちに寄り添って歩んできた教育学研究者が、長年の調査と政策分析を土台に、日本の大学教育のこれからを骨太に提起した労作。
目次や構成
〔目次〕
- まえがき
- 第1章 激変する学生像・大学像
―自己肯定感と未来展望をもてない大学生- 第1節 私の大学の教養課程検討委員会の議論から
- 第2節 自己肯定感・自己効力感をもてない高校生・大学生
―文部科学省調査を検討する - 第3節 未来展望をもてなくさせられている大学生
- 第4節 学生は主権者意識をもっているか
- 第2章 学生が学習意欲を感じるとき
- 第1節 生きた感心の所在を探る
- 第2節 学生が展望する自己形成と学びの目標
- 第3節 社会に役立てるための学びを求めて
- 第4節 自己と社会に対する関心はどのように獲得されるか
- 第3章 青年・学生の自己形成を左右する社会・文化構造
- 第1節 能力主義の社会と教育システムによる子ども・青年の囲い込み
- 第2節 能力主義教育を相対化し自己形成する子ども・青年
- 第4章 自己形成論と教育論から見た「大学改革」政策の問題点
- 第1節 大学審議会の学生観・教育観について
- 第2節 中央教育審議会の大学像
- 第3節 イギリスにおける新自由主義批判から学ぶ
―B・サイモンとS・トムリンソンの批評
- 第5章 能力主義と学生の自己意識・学習観の動態
―能力主義の呪縛と自己解放の過程を見つめる- 第1節 能力主義・学校歴社会の囚人のような学生像
- 第2節 能力主義教育における教養と学力の構造
- 第3節 能力主義からの自己解放の条件と内面的過程
- 第4節 学力・学習観の転換と青年・学生の教育要求
- 第6章 学習共同体と生きる力をはぐくむ教養教育の創造
- 第1節 「人権を学ぶ」法学の授業づくり
- 第2節 学習共同体づくりと教養教育の展開
- 第3節 学習共同体をとおして教養の主人公へ
- 第7章 自我と教養と主権者への自己形成をめざして
- 第1節 大学の授業から学生たちが体得する学び方・学ぶ力
- 第2節 憲法「改正」問題に対する批判と主権者意識の形成
- 第3節 目標にしたい世界水準の大学像と教育像
- 注および参考文献
- あとがき
著者情報
新村洋史
中京女子大学教授。1943年、静岡県生まれ。早稲田大学大学院法律学研究科修士課程修了(労働法)、東京大学大学院教育学研究科博士課程修了(教育行政学)。大学教育学会常任理事、東海高等教育研究所所長、教育科学研究会常任委員。著書に『大学再生の条件』(1991、大月書店、共著)、『何のための大学評価か』(95、大月書店、共著)、『大学ビッグバンと教員任期制』(98、青木書店)、『21世紀の大学像を求めて』(00、水曜社)、『人権の時代』(99、青山社)など。

大学生が変わる
定価2,200円
(本体2,000円)
2006年6月