
都立高校の卒業式で起きた「日の丸・君が代」の強制。内心の自由を行使し着席のまま「君が代」を歌わなかった教師たちは処分され、起立したが歌わなかった主人公の宗方謙三も、大きな岐路にたたされる。権力の弾圧のなかで“普通の教師”は何を考え、どう行動しようとしたのかを感動的に描く長編。
目次や構成
〔目次〕
- 1章 閉校式
- 2章 仕事はじめ
- 3章 新学期
- 4章 目標管理
- 5章 夏休み
- 6章 上意下達
- 7章 刻々
- 8章 ウタハタ
- 9章 前夜
- 10章 卒業式
- 11章 嵐
- 12章 支援
- 13章 旅立ち
- 14章 審問
- エピローグ
「国歌斉唱。ご起立下さい」いよいよそのときがきたのだ。ところが伴奏の音がしない。 謙三は身を固くして目を閉じていた。ひどくながい時間に感じた。 ・・・そのときすぐ後ろで低いが強い調子の声がした。教頭だった。
(本文より)
著者情報
森与志男
1930年生まれ。日本民主主義文学会会長。