
巨費を投じた国営諫早湾干拓は、ムツゴロウやタイラギなど多様な生命を育んできた有明海に今も深い傷跡をきざみ続けている。漁業破壊、干拓農地の不安、住民への財政負担……。「事業目的」さえ破綻しているこの干拓は必要だったのか? 環境破壊の公共事業を問い、海と暮らしの再生にむけて人々が一致できる解決の方向を探る。
目次や構成
目次
- はじめに
- 序章「宝の海」―― 有明海
- これが有明海だ
- 「宝の海」の恩恵
- 第1章 沿岸漁民の叫び
- 「ギロチン」の衝撃
- 「調整池」という汚染源
- 導流堤は何のために
- 年間2000万稼げた海は
- 地域を潤してきた海の恵み
- 「想像しよらんやった」
- 湧くようにいた車えび
- 後始末の大きな負担
- 第2章 まやかしの公共事業
- 「角栄」への贈り物
- 半世紀にわたる漁民の闘争
- 殺し文句は「防災」
- 「複式干拓方式」は安心・最良か
- 事態は警告どおりに
- 干拓農地のリース分配になぜ固執
- 各地の干拓地で営農失敗
- 耕作放棄地が続出してでも
- 第3章 取り戻せ 宝の海
- 100人に聞いた真実
- 借金に追われる漁民たち
- 進行する海の病状
- 「海の濁りが減った」・・・・・・心配
- 諫早湾の調整池ルートで泥化
- 原因究明を避け続けた「再生事業」
- 受注企業と自民党の癒着
- 「開門」で示された展望
- 不可解な「アサリ被害」
- 列島の歴史を語る生物たち
- “公共事業”依存症
- 第4章 干拓事業のゆくえ
- 「有明海SOS!」
- 地元財政を圧迫する調整池
- 100年返済の公金
- 補論 インタビュー
- * 松藤文豪さん (「有明海漁民・市民ネットワーク」代表)
- * 東 幹夫さん (長崎大学名誉教授)
- * 馬奈木昭雄さん (「よみがえれ! 有明海訴訟」弁護団長)
著者情報
松橋隆司
1940年東京生まれ。ジャーナリスト。元「しんぶん赤旗」科学部長、同編集委員。

宝の海を取り戻せ 諫早湾干拓と有明海の未来
定価1,760円
(本体1,600円)
2008年4月