
温暖化をはじめ地球環境をめぐるさまざま問題が顕在化し、人類的な関心事となっている。人口増加にともなう食料不足、資源枯渇、環境破壊による「地球破局」論もまことしやかに喧伝されている。地球はどこまで「有限」で、本当に「持続可能な発展」はできるのか――地球的課題を総合的に大観するユニークな啓蒙書。
目次や構成
〔目次〕
- はじめに
- 第1章 「地球破局」論から「持続可能な発展」論へ
- 人類の破局を警告する「地球破局」論
- 世界の主流になった「持続可能な発展」論
- 第2章 ルポ 世界の人口はどこまでも増えるのか
- 人口減少社会に向かう先進国
- 少子化社会へ向かう発展途上国
- 人口問題の解決をめざす国際社会
- 第3章 地球での食料増産は限界か
- これまでにない食料の生産
- 地球が秘める食糧増産の可能性
- 世界が直面する現実の食料問題
- 第4章 地球の資源は枯渇寸前か
- 可能性秘める地球のエネルギー資源
- 地球は物質資源の宝庫
- 世界が直面する現実の資源問題
- 第5章 地球環境を破壊した要因は何か
- 最悪の事態は食い止めたオゾン層破壊問題
- 国際社会は地球温暖化問題の解決をめざす
- 第6章 「持続可能な発展」を確かなものに
- 国際社会は「持続可能な発展」をめざす
- 「持続可能な発展」は世界平和を求める
- おわりに
- 参考文献
「はじめに」より
…ある学生は、その感想文の中で、「授業を受ける前の私は、マスメディアに踊らされ、科学的な根拠も知らず、どこからか耳にした“石油は今後三〇年で枯渇する”“地球はもう長くない”などのフレーズを口にする“地球破局”論者でした」と書いてくれた。…しかし、学生は授業の中で、大きく変わる。冒頭に紹介した学生は、「科学的データに裏付けられた授業を受けるにつれ、私の中で“地球破局”論が徐々にくずれていきました」と書き、「私は、主権者として、科学的知見をもって、国の政策に的確な票を入れられる国民になりたい、と思いました」と打ち明けてくれた。…地球は、確かに「有限な惑星」である。しかし、人間社会の生活環境としては、「可能性に満ちた惑星」でもある。だから、国際社会は、「地球破局」論ではなく、「持続可能な発展」論を共有し、その実現をめざしつつある。とはいえ、「持続可能な発展」は、そう簡単に実現できない。「持続不可能な社会の仕組み」を、「持続可能な社会の仕組み」に変革しなくてはならないからである。それらのことを、これから、じっくりと探究してゆきたいと考えている。
著者情報
岩渕孝
1936年生まれ。東京教育大学理学部地学科卒業。東京教育大学附属高等学校教諭を経て、秋田大学教授。聖心女子大学・東京国際大学・成蹊大学講師(非常勤)。著書に『環境問題再入門 解決をめざす人類の歩みに学ぶ』『現代世界の資源問題入門』。

「有限な地球」で 人口・食料・資源・環境
定価1,650円
(本体1,500円)
2010年3月