
民衆のゆたかな創造力が生みだした、貴重なことばの数々!
滅びゆく日本の方言
佐藤亮一=著
明治から昭和初期の頃まで全国各地で使われていた〝伝統的〟な日本の方言。『日本言語地図』や『方言文法全国地図』をもとに、その貴重でユニークなことばの世界をテーマ別に紹介する。方言の分布、ことばの由来、語形誕生の順序、日本語の歴史との関係などをやさしく解説しつつ、これからの方言の変容に思いを馳せる本。
目次や構成
* 目次 まえがき 3 Ⅰ 方言とはなにか 13 方言とは 14 / 方言の生成と伝播 16 Ⅱ 自 然 19 かみなり(雷)──昔は「ナルカミ」(鳴神)と言っていた 20 いなずま(稲妻)──「イナズマ」は稲の夫だった 24 つゆ(梅雨)──「ツユ」は西日本で生まれた共通語 27 つらら(氷柱)──『源氏物語』では「たるひ」 30 つむじかぜ(旋風)──アラシ(嵐)の「シ」は「風」を意味する古語 35 しあさっては何日目?──「シアサッテ」か「ヤノアサッテ」か 39 〔解説〕①周圏分布・ABA分布・方言周圏論 21 / ②民衆語源・民間語源 23 ③西日本生まれの共通語 27 Ⅲ 食物・料理・味 45 さといも(里芋)──芋煮会の定番 46 じゃがいも(馬鈴薯)──地名や人名から生まれた呼び名が多い 49 もみがら(籾殻)とぬか(糠)──昔はどちらも「ヌカ」と言っていた 53 すりばち(擂鉢)とすりこぎ(擂粉木)──スリコギはスリバチの夫 58 「甘い」と「塩味が薄い」──砂糖の味をあらわすアマイは新しい表現 61 〔解説〕④忌みことば(タブー語) 60 Ⅳ 人間・生活 63 ほお(頬)──昔は「ツラ」と言っていた 64 ものもらい(麦粒腫)──物をもらうと治る目の病気 67 あざ(痣)とほくろ(黒子)──ホクロは「ハハクソ(母糞)」の変化 70 つば(唾)とよだれ(涎)──ツバは「ツバキ」(つ+吐き)の変化 75 ゆび(指)──昔は「および」と言っていた 78 かかと(踵)──西はカガト、東はカカト 84 おんな(女性)──「をみな」は「美しい女性」という意味だった 86 あほ・ばかの方言──バカはアホよりも古いことば 91 酒とことば──「酒」の方言は少なく、「酔っぱらい」の方言は多い 95 〔解説〕⑤類音牽引 66 / ⑥混交 80 / ⑦基礎語彙 97 / ⑧方言量 98 Ⅴ 動 植 物 101 かたつむり(蝸牛)──柳田國男の「方言周圏論」で有名 102 とんぼ(蜻蛉)──方言に残る古語(「あきづ」と「ゑんば」) 108 カマキリとトカゲ──意味の逆転! 112 カエル(蛙)──「ヒキ」「ビッキ」は「カエル」より古い 114 とさか(鶏冠)──「トリ(鳥)サカ」の変化 117 うし(牛)──東北の「ベゴ」は牛の鳴き声から 119 牛の鳴き声・雀の鳴き声──東京の雀はチーチーと鳴く 122 ふくろうはなんと鳴くか──「糊をつけて干せ」など多様な表現 125 どくだみ(草)──語源は「毒を止める」 128 つくし(土筆)とすぎな(杉菜)──つくし誰の子、すぎなの子 130 〔解説〕⑨誤れる回帰 104 / ⑩音位転倒 118 Ⅵ 遊 戯 133 おてだま(お手玉)──北海道のアヤ(コ)は「あやとり」と同じ発想から 134 たこ(凧)──ハタは古く、イカが新しい 137 たけうま(竹馬)──「タケウマ」は今とはちがう遊びだった 140 かたあしとび(片足跳び)──「ケンケン」は西日本から伝播した表現 142 えらび歌── ♪ どれにしようかな(天の)神様の言うとおり 145 Ⅶ 文法的特徴の地域差 151 「雨が降っているから」(接続助詞)── ♪ 俺たちゃ町には住めないからに 152 「今日はいい天気だ」(断定辞)──「ダ」「ジャ」「ヤ」は「である」の変化 157 「ミカンを皮ごと食べた」(接尾辞)──「グルミ」「ゴン」の表現も 161 「の」と「が」の使い分け──「先生の手ぬぐい」と「泥棒が手ぬぐい」 164 「能力可能」と「状況可能」──「泳ガレル」と「泳グニイー」 166 進行態と完了態──「花が散リヨル」と「花が散ットル」 168 「ラ抜きことば」と「レ足すことば」──共通語化する「ラ抜きことば」 171 〔解説〕⑪類推 172 Ⅷ 方言の現在 177 方言衰退の意識 178 / 共通語化することば 179 方言と共通語──使い分けの時代 180 / 生き残る方言語彙 182 各地で生まれる新方言 183 / 現代社会における方言の機能 185 教育における方言 186 / 災害と方言 188 商品・標語・ポスターにみる方言 190 / 方言で遊ぶ 191 教養・文芸・ドラマ 194 / 方言の機能の変化 197 〔解説〕⑫地方共通語 179 【引用文献】 199
著者情報
佐藤亮一
1937年東京生まれ。東北大学大学院博士課程単位取得。元東京女子大学教授。フェリス女学院大学名誉教授。国立国語研究所名誉所員。主な著書は『都道府県別全国方言辞典』(編著、2009年、三省堂)、『標準語引き 日本方言辞典』(監修、2004年、小学館)、『お国ことばを知る 方言の地図帳』(監修、2002年、小学館)、『生きている日本の方言』(2001年、新日本出版社)、『日本方言大辞典』(共編、1989年、小学館)、『方言文法全国地図』(共編、1989年~06年、大蔵省印刷局・国立印刷局)、『日本言語地図』(共編、1965~74年、大蔵省印刷局)など。

滅びゆく日本の方言
定価1,650円
(本体1,500円)
2015年9月