
「妊娠の適齢期は34歳まで」「熟女キラー」……。人を生殖の道具と見るような価値観が、国や自治体による結婚支援策の中でまかり通っている。公共政策としての「官製婚活」は、2013年以降急速に拡大してきた。官製婚活は何を目的に、どう進められてきたのか。その問題点を、現場への取材とともに検証する。
目次や構成
<目次>
- 第1章 官製婚活とは何か?
- 「地域縁結び」
- 結婚したい人の希望をかなえる?
- 「企業子宝率」
- 子宝モデル企業表彰式
- 「お持ち帰りしてください」
- 35歳までの女性しかいらない
- 官製婚活の始まり
- 優良事例の横展開
- 従来の少子化対策との違い
- 経済政策としての官製婚活
- 婚活議連と政府検討会
- ライフプラン教育によるプレッシャー
- 強調される規範的な家族像
- 子どもの頃からの準備
- コロナ禍以降の官製婚活
- 利権と「婚活ムラ」
- 第2章 「少子化対策」という課題設定
- 生み出された「少子化」という概念
- 人口減少問題へのアプローチ
- 公共政策に忍び込む「相手選び」の価値観
- 公共性の欠落
- リプロダクティブ・ヘルス/ライツ概念の変容
- 少子化対策と「国民の責務」
- バックラッシュの影響
- 利用される男女共同参画
- 「子育ての意義」を超えて
- 第3章 官製婚活を支える右派の家族観
- ジェンダー・家族政策の転換点
- 共有される価値観
- 自民党保守派の家族観
- 軌を一にする宗教右派
- 重用される有識者たち
- 右派系シンクタンクとの連携
- 右派にとっての家族
- 第4章 官製婚活と「受胎前・妊娠前ケア」
- プレコンセプションケアとは?
- 目的は「少子化対策」
- 官製婚活との連続性
- 産婦人科医ら専門家団体との関係
- 次の命へのバトンタッチ?
- 板挟みになる産婦人科の現場
- 「権利」や「自己決定」が消えている
- 優生思想の教化につながらないか
- プレコンサポーター5万人の脅威
- 終章 官製婚活と日本社会のゆくえ
- 撤退自治体と批判の論点
- 批判の背景――研究やメディア報道から
- 若年女性への期待と軽視
- 公共政策と日本社会のゆくえ
著者情報
斉藤正美
1951年、富山県生まれ。富山大学非常勤講師。専攻は社会学、メディア研究、フェミニズム・社会運動研究。共著に『宗教右派とフェミニズム』(2023年)、『まぼろしの「日本的家族」』(2018年)、『国家がなぜ家族に干渉するのか 法案・政策の背後にあるもの』(2017年、いずれも青弓社)、『徹底検証 日本の右傾化』(2017年、筑摩書房)、『社会運動の戸惑い フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動』(2012年、勁草書房)などがある。
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