
六世紀の九州を舞台に何が起きたのか。豪族・磐井がヤマト王権と交戦したと伝えられる「磐井の乱」の謎を「記紀」などの克明な文献考証で解明。中国,朝鮮半島を結ぶ東アジアの激動をからめた新しい視点から古代国家形成への道をたどる。
目次や構成
[目次]
- 第一章 今、なぜ、「磐井の乱」なのか
- 始まりを知りたい
- 「皇国史観」にあらがって
- 東アジア地域世界のなかで
- 倭人の地域政権の動きを
- 「初期国家」論への疑問
- 「英雄時代」論の継承
- 「地域国家」論への共感
- 第二章 文献の痕跡、探求の足跡
- 『古事記』の叙述
- 『書紀』の叙述
- 『筑紫風土紀』の叙述
- 「国造本紀』の叙述
- 先駆けとなった探究
- 朝鮮侵略の負担に耐えかねた国造
- 資料の検討の深まり
- 考古学者が見た筑紫の王者
- 国家と民族との形成の始まり
- 第三章 王権の確立、種族の統合
- 史上最初の宮廷君主
- ヤマト王権の完成
- キビ政権の瓦解
- ヲシ王(「顕宗・仁賢」)の擁立
- フト王(「継体」)の推戴
- 鉄素材供給システムの吸収合併
- 磐井の戦争へ―その I
- 第四章 筑紫の王者、その権力のありさま
- 「国造制度」はあったのか
- 筑紫ウヂの問題点
- 筑紫・豊・火の有力者
- 筑後と肥後とのあらまし
- 豊前と豊後とのあらまし
- 筑前と肥前とのあらまし
- 九州の豪族とヤマト王権との関係
- 筑後の港とヤマト王権
- 筑紫君の権力の中枢
- 磐井の戦争へ―そのII
- 第五章 東アジア、四七五年〜五三二年
- 加羅の立場から視る
- 加羅のくにぐに
- 五世紀第IV四半期〜六世紀第I四半期
- 百済の場合
- 新羅について
- 加羅の場合
- 倭国の立場
- 磐井の戦争へ―そのIII
- 第六章 戦争と政変と南加羅滅亡、その年次の問題
- 『百済本記』の伝聞記事
- 欽明天皇一代の年立ての問題
- 「二つの百済王暦」説の検証
- 『継体紀』の対外関係記事
- 第七章 戦争の事実、そののちに来たもの
- 基本的な事実
- 日本史上最初の戦争
- その後に来た国家
- 磐井の敗戦から二〇〇年
- 図版の出典
- あとがき
著者情報
山尾幸久

筑紫君磐井の戦争 ―東アジアのなかの古代国家―
定価2,860円
(本体2,600円)
1999年11月