
中国・アジアへの侵略を自存自衛の戦争といつわる『新しい歴史教科書』は、原始・古代史の記述でも歴史の真実を大きくゆがめています。本書は、戦前の国定教科書から現代までの歴史教科書の変遷をくわしく跡づけ、検定制度の不当性を批判しつつ、クニの始まりを神話で美化する「つくる会」教科書の危険性を告発しています。
目次や構成
[目次]
- はじめに
- 第Ⅰ章 富国強兵ささえる神話と皇国史観
―近代公教育発足当初の歴史教科書―- 明治維新と最初の歴史教科書『史畧』
- 自由民権運動と教育への国家統制の強化
- 第Ⅱ章 天皇神格化のためにゆがめられた原始・古代史
―大日本帝国憲法のもとでの歴史教科書―- 大日本帝国憲法と国定教科書制度の成立
- 国定制度のもとでの歴史教科書
- 十五年戦争のもとでの歴史教科書
- 第Ⅲ章 新しい憲法のもとではじまった歴史教育
―占領下の教育と歴史教科書―- 敗戦と国定歴史教科書『くにのあゆみ』
- 戦後民主主義の息吹と歴史教科書
- 第Ⅳ章 戦後の右傾化のなかの歴史教育
―かえられていく歴史教科書―- 「学習指導要領」の改悪と神話教育の復活
- 現行の歴史教科書
- 第Ⅴ章 異常な「つくる会」教科書の登場
―間違いだらけの『新しい歴史教科書』―- 二〇〇〇年度検定の『新しい歴史教科書』
- (i) 考古資料を恣意的に解釈する「日本のあけぼの」
- (ii) 矛盾を露呈した「古代国家の形成」
- (iii) 戦前・戦中の国定教科書と酷似する『記』『紀』の神話
- 二〇〇四年度検定の白表紙本「つくる会」歴史教科書
- (i) 混乱きわまる「日本のあけぼの」
- (ii) 「神武天皇の東征伝承」で語りたい「古代国家の形成」
- 二〇〇〇年度検定の『新しい歴史教科書』
- おわりに
- 参考文献
著者情報
勅使河原彰
1946年、東京都生まれ。1975年、明治大学文学部卒業。専攻は日本考古学(主に縄文時代)。現在、文化財保存全国協議会常任委員。主な著書に、『歴史教科書は古代をどう描いてきたか』(2005年、新日本出版社)、『縄文文化』(1998年、新日本新書)、『日本考古学の歩み』(1995年、名著出版)、『日本考古学史――年表と解説』(1988年、東京大学出版会)など。

歴史教科書は古代をどう描いてきたか
定価1,650円
(本体1,500円)
2005年7月