
日本軍が中国での侵略戦争でつくり出した「慰安婦」は、戦後も癒されることのない深い傷を抱えて生きてきた。「私たちに謝罪と補償を」――沈黙を破り声をあげた被害者たちに応え、日本と中国の弁護士は団結した。不可能と思われた日本の裁判で真実を明らかにしようと闘った弁護士と被害者、支えた人々の熱きドキュメント。
目次や構成
〔目次〕
- はしがき
- 1章 中国人「慰安婦」問題とは
- はじめに――黄土高原の女性たちを訪ねて
- 被害者との出会い
- 1994年 一本の電話から
- 初めての聞き取り調査
- 張双兵先生のこと
- 裁判を提起する
- 日本の裁判に訴えるという決意
- 被害者の心の傷の深さを知る
- 中国人弁護士との出会い
- 初めての原告本人尋問
- PTSDの立証――現在に続く被害
- 2章 加害と被害の真実
- 被害事実を知ることの困難
- 初めての現地訪問
- 語ることのつらさを越えて
- 間に合わなかった訪問
- 被害の深さと広がり――戦後も続く家族の被害
- 最悪の判決から高裁でのたたかいへ
- 最初の判決と原告たち
- 事実は認定するが責任はない
- 加害兵士の証言を求めて――控訴審での新たな試み
- 加害兵士の証言と歴史的背景
- 被害兵士の証言と歴史的背景
- 華北の戦場で行なわれたこと
- 山西の戦場であったこと――近藤一証言から
- 加害兵士の悲哀――人間性を破壊されて
- アジアの被害者と連携して
- 政府の責任認めた下関判決
- 女性国際戦犯法廷――「天皇裕仁は有罪」
- NHKがカットした万愛花証言
- 3章 裁判というプロセスを経て
- 裁判官との対話―高裁判決から最高裁へ
- 人間の「情」を戒めた判決とは
- 「国際社会の声を聞いて」――最高裁での解決要求
- 法律論とはいえない最高裁判決
- 裁判という舞台の持つ意味
- 「慰安婦」問題を広く明らかに
- 裁判という困難なプロセス
- 判決で得られたもの
- 「自分たちの闘いは正しかった」――被害者にとっての裁判
- 4章 どう過去と向き合うか
- 世界が注目している日本の対応
- 世界で相次ぐ日本政府に対する謝罪要求決議
- 日本社会の反応は
- 世界が共有する「慰安婦」の被害とは
- 謝罪と賠償について――アジア女性基金の失敗
- 今、求められていること
- 被害者は今、何を求めているか
- 「日本政府の公式の」謝罪
- 「誠実な謝罪」とは、そしてその証としての補償
- 教育と広報による再発防止について
- 結びにかえて
- 日本ではできないことか――ドイツに学ぶ
- 被害者の心に寄り添って
- あとがき
著者情報
大森典子
1943年生まれ。弁護士。家永教科書訴訟弁護団、中国人「慰安婦」訴訟弁護団団長。著書に『砂上の障壁――中国人戦後補償裁判10年の軌跡』など。

歴史の事実と向き合って 中国人「慰安婦」被害者とともに
定価1,760円
(本体1,600円)
2008年12月