
「非常に、短い間にきらっと光るものがあって」と往事を語る妻、「帰ってきてからまた描くから」と出征した画学生、「絵を一枚でも多く防空壕へ入れよう」とした父……。知られることが少なかった遺族の生テープが、無言館に集積されていた! 戦没画学生の「命の輝きと死の無念」を痛切に語った証言の数々を、今回初めて単行本化する。
目次や構成
〔目次〕
- 記憶の旅、記録の旅――無言館「ボイスライブラリー」のこと……窪島誠一郎
- 伊澤 洋[享年26]……だって、これは洋の命でしょう(兄・伊澤民介さん)
- 市瀬文夫[享年29]……母さん、ちゃんと守るから(友人・熊谷元一さん、長男・市瀬和利さん)
- 岩田良二[享年30]……早く直りたい一心だったと思うんです(妹・松浦今子さん)
- 太田 章[享年23]……絵を一枚でも多く防空壕の中へ入れようと(妹・太田和子さん、同級生・毛利武彦さん)
- 小柏太郎[享年26]……兄さん、絵を描いていてよかったね(弟・小柏二郎さん)
- 尾田龍馬[享年25]……「運命」を聴くたんびに涙が出ました(姉・山本登美子さん、姉・多田多美子さん、姉の息子・檜垣保孝さん)
- 河口正喜[享年32]……親父に似てるって言われるのが、一番うれしいんです(息子・河口正彦さん)
- 川 雅[享年33]……赤紙一枚で死んでしまう(妻・川文子さん、娘・高木千鶴さん)
- 桑田一彦[享年23]……絶句してしもうた、それがずっと凍りついていた(妹・桑田照美さん)
- 桑原喜八郎[享年24]……帰ってきたらまた描くから(弟・桑原十四郎さん)
- 駒田芳久[享年24]……僕もお嫁さんがほしかったなぁ(妹・海堀和子さん、その夫・海堀寅一さん)
- 椎野 修[享年31]……ビルマの陽を贈りたいようだ(妻・椎野秀子さん)
- 杉原基司[享年23]……母は涙 乾く間なく 祈ると知らずや(妹・杉原恂子さん)
- 手島守之輔[享年31]……探しに行った時には、原爆がまだどこかしらあった(妹・手島 篠さん)
- 中川勝吉[享年26]……もし僕が帰ったらパリへ留学したい(義妹・中川幸子さん)
- 中村萬平[享年26]……ビルマノ陽を贈りたいようだ(妻・椎野秀子さん)
- 西岡健児郎[享年26]……非常に、短い間にきらっと光るものがあって(妻・藤戸せつさん)
- 日高安典[享年27]……涙を流さんで泣くというのがあるんですね(弟・日高稔典さん)
- 前田美千雄[享年31]……一年間でしたが、私は幸せだったなぁ(妻・高沢絹子さん)
- 益田卯咲[享年31]……野の花を父の枕元に生けて(兄・益田 申さん、兄嫁・益田八千代さん)
- 結城 久[享年31]……這ってでも生きて帰ってくるから(弟・結城 誠さん)
- 吉田二三男[享年30]……七十になっても八十になっても絵筆を離したくない(妹・吉田晴子さん)
著者情報
無言館
一般財団法人 戦没画学生慰霊美術館。日本のアジア・太平洋戦争で、志半ばに命を奪われた画学生たちの残した絵画や作品、愛用品、手紙などを収蔵、展示しています。1997年5月2日、信濃デッサン館の分館として開館。

ボイスライブラリー 無言館の証言
定価1,980円
(本体1,800円)
2009年10月