
戦前から網元を営む杉本家を水俣病が襲う。いじめられ孤立する長い日々。けれど、父は決して仕返しを許さない。チッソを訴える裁判を決意するも、糧を奪われた漁師の一家は困窮。苦しみのどん底でつかんだのが「のさり」という境地だった。水俣病資料館の語り部を続ける一家の歴史から、水俣病事件を問い直す迫真のノンフィクション作品。
目次や構成
【目次】
- はじめに
- プロローグ
- 2011年、夏
- 戦後
- 茂道の海
- 異変
- 杉本組
- 友人の死
- 工場の影響
- 混乱
- 有機水銀
- トシの発病
- 隔離病棟
- 漁師になりたい
- 結婚
- 子供が欲しい
- 訴訟
- 裁判の行方
- どん底
- 母の匂いはサロンパス
- 舟魂
- 勝利
- えい子食堂
- 長男の葛藤
- ミカン栽培
- 汚染魚獲り
- がさくれミカン
- パッチ漁へ
- 舫い
- エピローグ
- おわりに
【推薦のことば】
- ノンフィクション作家 柳田邦男さん
- 壮絶な病、苛烈な差別、慈悲なき国家と企業ーーその不条理のどん底で見出した漁師・杉本家の人々の生き方と信条。著者の人間愛に満ちた眼差しによる緻密な取材が、不毛の時代においてもなお存在する崇高な人間性のかたちをヴィヴィッドに描き出した。石牟礼道子の『苦海浄土』以後の秀逸の記録文学作品だ。
著者情報
藤崎童士
1968年生まれ。ノンフィクション作家。水中写真家・中村征夫氏の半生を描いた『半魚人伝――水中写真家・中村征夫のこと』(2010年、三五館)。『殺処分ゼロ――先駆者・熊本市動物愛護センターの軌跡』(2011年、三五館)につづき、本書が3作目。劇作活動として、2004年度、06年度に文化庁舞台芸術創作奨励賞(現代演劇部門)を受賞する。

のさり 水俣漁師、杉本家の記憶より
定価2,090円
(本体1,900円)
2013年7月