
関東大震災から99年。震災時、東京、関東周辺で軍隊・警察及び自警団によって6000人以上と言われる朝鮮人が虐殺された。その混乱の中で、この事実を絵筆で克明に描いた画家たちの絵と、新発見の画家・淇谷(きこく)による「関東大震災絵巻」を公開し、そこから現代の私たちに問いかけられた課題を考える。
目次や構成
<目次>
- はじめに
- 序 関東大震災と私──義母の体験から
- Ⅰ 「描かれた朝鮮人虐殺」論にむかって
- 1 「描かれた朝鮮人虐殺」からのアプローチ
- 2 「虐殺絵」への視点──国立歴史民俗博物館の常設展示「関東大震災」にかかわって
- 3 高麗博物館の「虐殺絵」展示の視点
- Ⅱ 少年が見た朝鮮人追跡
- 1 子どもたちが体験した「鮮人騒ぎ」
- 2 子どもが描いた“赤と黒の世界”
- 3 一〇歳の少年の目に焼きついた光景
- Ⅲ 一枚の「虐殺絵」スケッチから見えるもの
- 1 まるで虐殺の「実況中継」のよう
- 2 作者は河目悌二か
- 3 同人たちの体験談
- 4 作者の視座とまなざし
- Ⅳ 萱原白洞の「東都大震災過眼録」
- 1 震災絵巻の発見経過
- 2 白洞の執念
- Ⅴ 柳瀬正夢と堅山南風
- 1 「ねじ釘の画家」・柳瀬正夢と震災
- 2 生まれ変わった柳瀬正夢の震災スケッチ
- 3 日本画家・堅山南風のその時
- 4 紙背に虐殺を描いた「自警団」
- Ⅵ 試論・新発見「関東大震災絵巻」に迫る
- 1 幻の画家「淇谷」の絵巻物がオークションに登場
- 2 関東大震災一〇〇年を前に新しい虐殺絵に出合う
- 3 「関東大震災絵巻」第一巻の「自序」
- 4 第一巻の「自序」の要約
- 5 新絵巻物・第一巻を読み解く
- 6 朝鮮人虐殺の四つの場面に迫る
- 7 虐殺場面の先の状況
- 8 「関東大震災絵巻」第二巻の「自序」
- 9 新絵巻物・第二巻を読み解く
- 10 「自序」について
- おわりに
- 参考文献一覧
著者情報
新井勝紘
1944年東京生まれ。東京経済大学卒。町田市史編纂室、町田市立自由民権資料館主査、国立歴史民俗博物館助教授、専修大学教授、認定NPO法人・高麗博物館館長を歴任。 著書に『五日市憲法』(2018年、岩波書店)、編著『自由民権と近代社会』(2004年、吉川弘文館)、共著『多摩と甲州道中』(2003年、吉川弘文館)、編著『近代移行期の民衆像』(2000年、青木書店)、編著『戦いと民衆』(2000年、東洋書林)など。

関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く
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2022年8月