『資本論』の大きな体系を全体としてつかむため何に注目するか、その分析と叙述の方法をどう理解するか――学ぶ上でのヒントを詳しく解説する。古典派経済学へのマルクスの見方をふまえ、今日の近代経済学の弱点とそこから学ぶ点も指摘。多国籍企業や「カジノ資本主義」などの問題にもふれた、著者自身の「いかに学ぶか」の集大成。
目次や構成
〔目次〕
- 第1章 商品と貨幣―単純な商品流通
- 商品の分析―分析はより深く、判断はより高く
- まぼろしのような価値対象性
- 商品から貨幣へ―分析から発生論的推論へ
- 簡単な価値形態について
- 価値形態の発展
- マルクスによる古典派経済学の方法批判
- 貨幣と商品流通
- 商品から貨幣へ
- 日本における貨幣誕生の歴史
- 貨幣の三つの規定
- 抽象的な規定から具体的な形態への接近
- 補論 商品についての追加点―最も簡単な形ほど複雑である
- 第2章 賃労働と資本―資本主義的生産関係
- 貨幣の資本への転化
- 貨幣は資本の最初の現象形態
- 流通形態G-W-Gの考察から始める
- 資本の一般的定式をめぐる問題
- 資本誕生の決定的な契機は労働の賃労働への転化
- 剰余価値はいかに生まれるか
- 資本の一般的定式はG−W(A、Pm)・・・P・・・W'−G'
- 資本の生産過程は労働過程と価値増殖過程との統一
- 日本の余剰価値率の研究
- 日本における資本の本源的蓄積
- 江戸時代に始まる資本の本源的蓄積の前奏曲
- 明治維新と資本の本源的蓄積
- トヨタ生産方法を考える
- ジャスト・イン・タイム
- 注文に応じた多品種生産
- ムダを徹底的になくす
- 見落としてはならないこと
- 貨幣の資本への転化
- 第3章 アダム・スミスのドグマ批判
- アダム・スミスのドグマ
- 三収入構成説のあやまり
- マスクスによる批判
- 不変資本と可変資本との区別を、固定資本と流動資本との区別との混同
- アダム・スミスのドグマ
- 第4章 近代経済学の泣きどころ
- なぜ近代経済学をとりあげるのか
- 近代経済学に特徴的な点
- 労働価値説対主観的価値説
- 社会的関係の研究対個人的行動の研究
- 主観的価値説の自己補修と、その結果
- 需要曲線はあるのか
- 企業は利益最大化のため行動する
- 第二の経済主体、企業
- 企業と消費者とは似た行動をする
- 現物形態(生産関数)から利潤を引き出す
- 費用の問題
- 賃金労働者にとっての最大効用とは何か
- 第5章 資本は運動である
- 資本論第1部から第2部への展開
- 資本循環の三形態
- 貨幣資本の循環、G-W(A、Pm)・・・p・・・W'-G'
- 生産資本の循環、P・・・W''−G'−W(A、Pm)・・・P
- 商品資本の循環、W'−G'−W(A、Pm)・・・P・・・W'
- 循環の三形態の統一と資本の回転
- 循環の三形態の統一
- 資本の回転
- 第6章 社会的総資本の再生産と流通
- 社会的総資本の運動と個別資本の運動
- 単純再生産から考える
- 単純再生産の条件
- 社会的総資本の再生産を動かす労賃の役割
- 固定資本問題
- 蓄積と拡大再生産の条件
- --補論 マルクスの再生産表式のマトリックス表示
- 経済恐慌
- 恐慌の抽象的可能性―商品流通と貨幣の発展とともに現れ、資本の流通・再生産の中で可能性の現実化の基礎を拡大
- 資本の流通、再生産の中で新しく現れる恐慌の契機
- 資本主義的生産の本性にもとづく恐慌の根本的な原因
- --補論 恐慌の"第一の契機"
- 資本の流通と再生産のなかから信用が生まれる
- 商業信用はいかに現れるか
- 貨幣信用はいかに現れるか
- 第7章 過剰価値から利潤へ
- 剰余価値から利潤への転化は第2部で準備された
- 第1部から第2部、第3部へ
- 剰余価値から利潤への中間項
- 剰余価値と利潤との「外観上の矛盾」とは
- 社会的総資本の運動と個別資本の運動全体の過程の中で個別資本をとらえ直す
- 利潤率の均等化は、個別資本の運動にとっての前提条件をして現れる
- 利潤率均等化のメカニズムが形成される
- 剰余価値から利潤への転化は第2部で準備された
- 第8章 ケインズ経済学―マルクス経済学との交叉点
- ケインズ経済学の経済理論上の特徴
- 資本家の行動を中心にすえる
- 経済体系の分析には貨幣と労働という二つの単位だけを用いる
- 世界経済の「不吉な予言者」
- ケインズとレーニン
- ケインズとブレトンウッズ
- いま、ケインズから学ぶこと
- ケインズ経済学の経済理論上の特徴
- 第9章 資本主義と奴隷制
- 奴隷貿易
- 三角貿易
- 三角貿易とイギリスの商業、産業、金融
- 奴隷の死亡率
- 資本主義発展の代償
- 最新のOECDの報告書から
- 今日の民族問題を考える視点
- 第10章 資本主義的生産の発展と終末
- 史的唯物論の見方
- 『資本論』が明らかにした資本主義的生産の発展方向
- 『資本論』第1部―資本主義的蓄積の一般的法則
- 『資本論』第3部-(1)―利潤率の傾向的低下の法則
- 『資本論』第3部-(2)―信用に内在する二面的性格
- マルクスの予見と今日
- アメリカ経済―経常収支の長期経済と拡大傾向
- 日本経済―長期的低迷への道
- おわりに
著者情報
工藤晃
1926年生まれ。東京大学理学部卒業。元日本共産党衆院議員。『マルクスは信用問題について何を論じたか』『現代帝国主義研究』『混迷の日本経済を考える』(いずれも新日本出版社)など著書多数。