
地球上の1000万種におよぶ多彩な生命はその構成分子と設計のしくみが同じで、すべて 40億年前のたった一種の生物に由来しているといわれる。意外に近しい生命のあり様を語る。ゲノム解読など新しい到達点に立って生体分子の働き、進化や自己増殖など、哲学専攻の文学部生と生化学専攻の教授が軽妙なトークを展開。
目次や構成
[目次]
- はじめに
- 第1話 生命分子のキャッチフレーズ
- 「いのち」、「生命」とは一体何でしょうか(学生)
- 生物学に良い教科書がないのはなぜですか(学生)
- 生物をつくるおもな分子はたった6つなのです(教授)
- 生命分子のキャッチフレーズをつくってみました(教授)
- 化学式は専門的な感じですが、何を表しているのですか(学生)
- 第2話 生命を育む水、生命を包む脂質
- 水がなければ生物は存在しないことになります(教授)
- 水の中でどのようにして細胞膜ができるのでしょうか(学生)
- 膜は熱力学の法則にしたがって「自然に」できます(教授)
- 膜形成はエントロピー増大則に反するように見えますが(学生)
- 第3話 生命を操るタンパク質
- 酵素タンパク質は単純な機械ではありません(教授)
- 酵素は活性化エネルギーの山を低くします(教授)
- 10万種類のタンパク質の立体構造はユニークでしょうね(学生)
- たしかに酵素の働きは魔物的ですね(学生)
- 生化学反応のエネルギーがATPとはどういうことですか(学生)
- 第4話 生命を養う糖
- 生命分子は炭素原子を中心に組み立てられているのですね(学生)
- 炭素原子をもたらす最大のルートは合成です(教授)
- エネルギーはどのようにつくられるのですか(学生)
- いよいよ炭素ガスから糖が光合成される番ですね(学生)
- 解糖も呼吸も結局はエネルギーをつくり出す経路なのですね(学生)
- 太古の始原生物はどんな生きものだったのでしょうか(学生)
- 第5話 遺伝子の発見
- DNAはいつ、だれが発見したのですか(学生)
- それにしてもメンデルは幸運でしたね(教授)
- 「遺伝子の働きとはいったい何か」の問いかけ(教授)
- 死んだ細菌の成分が作用したのですか(学生)
- 「DNA=遺伝子」の決定的な証拠は得られたのですか(学生)
- 第6話 生命を紡ぐDNA
- 物理屋さんが興味をもち始めたのです(教授)
- 「遺伝子=無周期性の結晶」と結論しました(教授)
- 二重らせんは美しいモデルですね(学生)
- 二重らせんの発見はすぐに大きなインパクトを与えましたか(学生)
- ワトソンとクリックが投げかけた問題は(教授)
- ヒトのDNAの長さは2mにもなります(教授)
- DNAはどうして右巻きになるのですか(学生)
- DNAはなぜ二本鎖でなければならないのですか(学生)
- 第7話 生命を統べるRNA
- 3つ組の塩基が1個のアミノ酸のコードになっています(教授)
- なぜDNAとRNAがあるのですか(学生)
- タンパク質の合成にはDNAは無関係です(教授)
- 「DNA→RNA→タンパク質」が根本原理です(教授)
- 暗号の解読はどのように進んだのですか(学生)
- 転移RNAはまさに核酸とタンパク質の翻訳機ですね(学生)
- RNAの編集機能とは何のことですか(学生)
- 第8話 自己増殖のしくみ
- 「時計に時計を生ませてみよ」(教授)
- DNAはデジタル、タンパク質はアナログですね(学生)
- 自己増殖装置を図に描いてみましょう(教授)
- DNAとRNAの違いはわずかですが、好都合ですね(学生)
- 修復の究極の方策は複製ではありませんか(学生)
- 生命のビックバンを考えたらどうでしょう(学生)
- 第9話 ヒトゲノムの解読
- ヒトゲノムの解読で全部わかったことになりますか(学生)
- 結局、遺伝子とは何なのでしょうか(学生)
- ゲノムがガラクタだらけとは正直ショックです(学生)
- 二足歩行がサルとヒトを分ける決定的な点です(教授)
- 生物進化を技術進歩のアナロジーで見るのは誤りです(教授)
- 第10話 生命分子を見る「科学の目」
- 生命分子を見る「科学の目」はどのように発展したのでしょう(学生)
- 枠組みは進化論、自然発生の否定、細胞学説ですか(学生)
- 遺伝子は人工合成できて当たり前ですね(学生)
- 発酵の研究が生化学の原点でもありました(教授)
- 酵素の発見こそが生化学の真の出発点でした(教授)
- 「酵素はタンパク質である」は疑惑の目で迎えられました(教授)
- 第11話 「生命」はどのように考えられてきたか
- アリストテレスは生きものをどう見ていたでしょうか(学生)
- デカルトの機械論は心身二元論ですね(教授)
- 近代的な生気論者にシュタールがいます(教授)
- ダーウィンの進化論はどうして重要なのでしょうか(学生)
- 生物はじつに合目的的にうまくできていますね(学生)
著者情報
宗川吉汪
1939年生まれ。京都工芸繊維大学名誉教授。生命生物人間研究事務所主事。東京大学理学部生物化学科卒業、理学博士。東京大学医科学研究所助手、京都大学ウイルス研究所助教授、京都工芸繊維大学教授などを歴任。著書・訳書に、『21世紀への跳躍4・生命の展開』(共著、三省堂、1988)、『ホートン生化学』(共訳、東京化学同人、2003)、『生命のしくみ11話』(新日本出版社、2004)など。

生命のしくみ11話
定価1,760円
(本体1,600円)
2004年7月