
誕生し、成長し、子を生み育て、そして死んでいく――人にとって「当たり前」に起こるこれらの出来事も、驚くほど精緻な人体のしくみが可能にしている。「人の誕生」とはいつのことか、性行動は人間にどんな意味を持つかといった問題から、ウイルス、エイズ、癌などまで、人間理解に欠かせない問題を生物学の視点から解説。
目次や構成
- はじめに
- 第1章 誕生
- それは受精卵から始まった
- 最初の二週間
- 細胞の運命が決まる
- 胎盤を通し母親から養分を
- 危険だが感動的な出産
- あなた方はラッキーだった
- 第2章 女の子と男の子
- 生殖細胞と体細胞
- 女と男では性染色体が違う
- 男の子は多く生まれる
- SRY遺伝子が男性を誘導
- X染色体が一本だと不利に
- 一卵性双生児には女子が多い
- 第3章 兄弟姉妹はなぜ違う
- 遺伝情報はDNAにある
- 多様性は減数分裂から
- 精子形成と卵子形成の違い
- 流産は減数分裂の失敗から
- X染色体の数の異常
- 第4章 性を語る
- 脳に支配される性行動
- 性周期はホルモンで調節
- 妊娠した時、しない時
- 卵子と精子の出会い
- 生殖から独立した性行動
- 問題になっている性感染症
- 性教育の重要性
- 第5章 クローンをつくる
- クローン動物の誕生
- そもそもクローンとは何か
- クローン羊ドリーの誕生
- 同じ三毛猫はいない
- クローン動物は正常か
- 胚から組織を再生させる
- 第6章 血液型の秘密
- 血液型と赤血球の糖鎖
- 酵素のおさらい
- 血液型の遺伝
- DNAと遺伝子の関係
- タンパク質の合成
- 三つ組の遺伝暗号
- 第7章 異物を排除する免疫
- 免疫のしくみ
- リンパ球が担う適応免疫
- B細胞とT細胞
- ワクチンとは何か
- インフルエンザの場合は・・・
- アレルギーは「過剰反応」
- 第8章 エイズとセックス
- ウィルスとは何か
- 新しいウィルス、HIV
- T細胞に潜み、破戒する
- 感染からエイズ発症まで
- エイズの治療薬
- エイズ死は年間三一〇万人
- 第9章 癌とタバコの危険な関係
- 癌は遺伝子DNAの病気
- DNAを損傷する発癌因子
- 起爆剤と促進剤
- 解明されていない発癌機構
- タバコとは何か
- タバコは肺癌の主要な原因
- アスベスト公害
- 第10章 脳がタバコを離さない
- ニコチンが脳に作用する
- 脳の「報酬回路」
- 神経細胞の回路とは何か
- ドーパミン経路
- タバコ依存症
- 第11章 ヒトゲノムと祖先を訪ねて
- ゲノムとは
- ヒトの遺伝子の数
- 一〇万種類のタンパク質を
- 遺伝子の本当の数は・・・
- ゲノム計画の意義
- アフリカが祖先の地
- 肌の色はなぜ違う
- おわりに
著者情報
宗川吉汪
1939年生まれ。京都工芸繊維大学名誉教授。生命生物人間研究事務所主事。東京大学理学部生物化学科卒業、理学博士。東京大学医科学研究所助手、京都大学ウイルス研究所助教授、京都工芸繊維大学教授などを歴任。著書・訳書に、『21世紀への跳躍4・生命の展開』(共著、三省堂、1988)、『ホートン生化学』(共訳、東京化学同人、2003)、『生命のしくみ11話』(新日本出版社、2004)など。

誕生・性・遺伝子 人間とは何か
定価1,870円
(本体1,700円)
2006年5月