
戦争へと突き進んでいく「旧満州」大連で、器械体操に熱中し、白線帽の青春をおくる俊郎。軍国少年ではないが反戦の思いにも至らず、友人の死を悼みながらも自分の「死」を納得できないまま、やがて時代の嵐に巻き込まれてゆく。俊郎の葛藤を自身の青春と重ねて描き、戦後60年の「有事」時代に警鐘を鳴らす自伝的小説。
目次や構成
[目次]
- 初めに
- 秋風晴雁群飛
- 紫にほふ藤の花
- 興れり白雲
- 憂ひぞ深き
- 暁雲の下
「私の成長の平凡な道筋など、他人に語るほどのものは何もないが、ふと昨今のイラク戦争参加、有事法制策定、憲法改悪の動きを見聞きして、心疼くものがあった。耳慣れない言葉が、かつて耳慣れた言葉を呼び起こす。私が往時いつも聞かされていたのは「非常時」だった。「有事」とは非常の事態が起こること、つまりは「戦時」だ。」―「初めに」より
著者情報
右遠俊郎
1926年生まれ。日本民主主義文学会会員。

アカシアの街に
定価2,090円
(本体1,900円)
2005年5月