
『蟹工船』が再び脚光をあびている現代と80年前の苛酷な労働と弾圧体制はどうつながっているのか。戦前・戦後と現代の治安体制の諸相を考える中で、抑圧する側とそれに抵抗し変革を希求する側との拮抗を、多喜二論、治安体制全般、「横浜事件」から捉え直し、「多喜二の時代」と現代を照射する労作。
目次や構成
〔目次〕
- I 小林多喜二から見えてくるもの
- 一 多喜二はどのようにしてプロレタリア作家・社会主義者となったのか
- 小樽高商軍教事件を通して
- 「折々帳」を通して
- 「蟹工船」から見えてくるもの――持続する「憤怒」を根源として
- 「シナリオ」の武装――多喜二と映画
- 二 多喜二はどのように治安体制を描いたのか
- 「暴力」と対峙する多喜二
- 三・一五事件の連鎖
- II 治安体制から見えてくるもの
- 一 治安体制の概観
- 二 総力戦下の治安体制
- 「治安体制」の位置
- 「治安体制」の深さと広がり
- 「大東亜治安体制」の構築へ
- 戦後治安体制への継続と断絶
- III 「横浜事件」から見えてくるもの
- 一 多喜二虐殺から「横浜事件」へ
- 二 神奈川県警特高警察の暴走――戦時下「共産主義運動」取締と「横浜事件」
- 「共産主義運動」の再警戒へ
- 戦時下の神奈川県特高警察
- 多喜二から「託されたもの」――あとがきにそえて
著者情報
荻野富士夫
1953年生まれ。小樽商科大学商学部教授。主な著書『昭和天皇と治安体制』『治安維持法関係資料集』『北の特高警察』『思想検事』『横浜事件と治安維持法』など。

多喜二の時代から見えてくるもの 治安体制に抗して
定価2,750円
(本体2,500円)
2009年2月