
歌の成り立ちを知れば、涙のあとに生きる勇気がわいてくる
心の歌よ! 日本人の「故郷」を求めて
伊藤千尋=著
世界中どこにでもある特有の歌。でも、日本ほど歌の種類が豊富な国は珍しい。生活から生まれた民謡はもちろん、他の国には見られない学校向けに作られた唱歌や民間の運動から生まれた童謡など、多種多様。それらの歌の背景を知ると、歌に込められたものの奥の深さに気づく。その人生や人の生きざまに肉薄した、何度も涙する感動の書き下ろし。
目次や構成
目次
- はじめに
- 序章 日本人の歌
- 日本人を引きつける「赤とんぼ」〜兵庫県、北海道
- 5歳で別れた母
- トラピストの赤とんぼ
- 親友・山田耕筰
- 日本は赤トンボの国
- 歌に癒しの力
- 第1章 人間愛
- 1 母よ、父よ、子よ
- 世の母への感謝を込めた「かあさんの歌」〜岡山県、長野県、東京都
- 家出先に届いた小包
- かあさん「は」
- 母の手の記憶
- 母を慕う太陽のような歌「上を向いて歩こう」〜茨城県、北海道
- 安保闘争の挫折から
- 母ちゃん街道
- スキヤキの名で
- 九ちゃんの星
- 亡き父を慕う少年の心「小さな木の実」〜兵庫県、岩手県
- 父を亡くした子の願い
- 交通遺児を励ます
- 死を肯定に変える力
- 2 兄よ、妻よ、夫よ
- 夜空の星に早世した兄を想う「涙そうそう」〜東京都、沖縄県
- 空から励ました兄
- 泣いて踊った沖縄のおばあ
- 貧しい開拓民の記憶
- 辛い人生を夫婦で生き抜く「喜びも悲しみも幾歳月」〜福島県、岩手県
- 孤島で灯を守る
- この人となら
- 灯台守に嫁いだ娘
- 死の間際まで手を
- 傷ついた海からのメッセージ「瀬戸の花嫁」〜香川県、山口県
- 欲望が自然を破壊
- 人名による自立の島
- 日本のモデルを創る
- 働く人の手
- 第2章 生きる
- 1 生きる
- 故郷への思いがほとばしる「北国の春」〜長野県、新潟県
- 欲望が自然を破壊
- 人名による自立の島
- 日本のモデルを創る
- 働く人の手
- 2 前を向く青春
- 実は男の闘争宣言だった「神田川」〜東京都
- 1時間で完成
- 闘う男の闘争宣言
- 凛として生きる美意識
- 別れから旅立ちの歌になった「なごり雪」〜大分県
- 門が開いた
- 1拍の違い
- 旅立ちの歌
- 真理に生きた女性の哀感がこもる「平城山」〜奈良県、高知県
- 万葉の女性に思いを
- 「真理に生きたい」
- 非難をものともせず
- 生き方も恋も貫く
- 第3章 日本の伝統と風景
- 1 伝統美の力
- 凛として生きる美の象徴「桜」〜京都府
- 3代で違う歌詞
- 進化する歌
- 桜のテーマは「生きる」
- 京の桜守
- シルクロードに桜並木を
- 着物の美と凛とした女性を歌う「女ひとり」〜京都府、茨城県
- 歌われた着物文化
- 後世に残る物
- 懸命に生きたあかし
- 色あせない日本人の心
- 苦難の生活からほとばしる民謡「南部牛追唄」〜岩手県
- 陸の孤島の人間力
- 牛も涙を流す
- 「生命村長」
- 全国最悪から全国一へ
- ロック調の民謡へ
- 2 郷愁の四季
- 日本人の原風景を描く「故郷」〜長野県
- あれが「かの山」です
- 志を果たした
- 自然を称える日本の唱歌
- 終章 苦悩から歓喜へ
- 国境を超えた和解「幸せなら手をたたこう」〜フィリピン
- お前を殺してやる
- 私たちは友だちだ
- 校庭に響く歌
- 生命倫理のパイオニア
- 自由と喜びを歌う「第九交響曲・歓喜の歌」〜徳島県、全国
- 日本で初めての「第九」
- 寛容な俘虜収容所長
- 今や日本の市民の歌に
- おわりに
著者情報
伊藤千尋
1949年、山口県生まれ。東京大学法学部卒業。74年に朝日新聞に入社。サンパウロやバルセロナ、ロサンゼルスの支局長などを歴任。2009年に定年を迎えたが再雇用で同紙の「be」編集部で勤務を続けている。主な著書に『凜とした小国』『9条を活かす日本』(ともに新日本出版社)、『反米大国』(集英社新書)、『燃える中南米』(岩波新書)など多数。

心の歌よ! 日本人の「故郷」を求めて
定価1,760円
(本体1,600円)
2021年2月