
国際連合(国連)は、2000年に21世紀の地球のために開発目標を定めました。本シリーズはこの開発目標をテーマごとに4巻にまとめています。日本のように戦争がなく、経済的にも発展した国で暮らせる人はごくわずか。第1巻では貧困と飢餓に苦しむ世界の子どもたちの暮らしを見つめ、私たちにできることは何かを考えます。
目次や構成
【もくじ】
- いま、地球のこどもたちは ― 2015年への伝言
- 世界の5人に1人は「貧困」です。
- 開発途上国でくらす子どもたち
- 開発途上国と後発途上国
- 児童労働・・・家計を支える子どもたち(フィリピン共和国、パキスタン・イスラム共和国)
- 「貧困」と「飢餓」に苦しむ子どもたち
- 人身売買・・・売られていく子どもたち(ネパール王国、ベナン共和国)
- ストリートチルドレン・・・路上でくらす子どもたち(インド、メキシコ合衆国)
- 難民・・・最貧のくらしを強いられる人びと(ウガンダ共和国)
- どうして開発途上国では食料がたりないの?
- 世界の子どもたちとともに
- 2015年のあなたへ
著者(本木洋子さん)のことば
- 平和な国づくりに向かって
- ベトナムとタイにはさまれた国、カンボジアを訪ねました。ストリートチルドレンやトラフィッキングにあった子どもたちの自立支援施設「若者の家」を訪問する旅でした。
- 国の実情を知るために、首都プノンペンのゴミ集積場に行きました。日本のように分別されていないゴミは、生ゴミ、燃えないゴミ、ビン、ペットボトルなどあらゆる物があつまってきます。巨大な山となったゴミは土の中で自然発火し、メタンガスが霧のようにあたりにたちこめていました。
- ハエや小さな虫が無数に飛んでいて、虫除けスプレーをつけていても服の中に入りこむのか、体がちくちくして痛痒くなってきます。
- 二千人もの人たちが、お金になるものをひろって生きている場です。小さな子どもたちも働いています。仲買人のところに持っていっては、わずかなお金をもらうのです。
- メタンガスとゴミの臭いに息苦しくなってあたりをみると、街の高層ビルが霞んでいました。ゴミ山に生きる人たちには、近くて遠い風景です。
- 子どもたちのためにNGOが運営する小さな学校がありました。授業は午前中の一時間だけですが、わずかな時間でも勉強できる唯一の学校です。
- ゴミ山の麓にある学校に行ったとき、ティアという十二歳の男の子に出会いました。ティアは、竹でできた掘っ立て小屋のような家に、月20ドルも家賃をはらって暮らしています。父親は地雷で足を失い、働くことができません。
- ティアの一日は、午前中は学校に行き、それから床屋で技術を習い、午後二時から十時までを危険なゴミ山で働いています。
- ティアの夢は床屋の店を持つことです。
- 一九七五年からわずか三年の間に、内線で三百万人が虐殺されたという歴史をもつカンボジア。その直後に生まれた人でさえまだ三十歳にもならず、人口の半分が二十歳以下だといいます。社会的インフラの整備も立ち遅れ、地雷や不発弾による犠牲者はあとをたたず、国外に売られていく子どもは毎月八百人もいるといわれています。
- 私が訪ねた「若者の家」の子どもたちには、面会にきてくれる肉親はいません。でも学校に通ったり職業訓練を受けたりして、おとなになって自立できるように勉強しています。支援を必要としている多くの子どもたちの数十人にしかすぎませんが、ひとりひとりが輝いていました。
- ゴミ山で生きるティアも、親に棄てられたり売られたりした子どもたちも、生まれてから十数年の間に苦労をなめつくしています。だからこそ、戦争のない平和な国づくりの夢に向かって生きていってほしいと思うのです。
- (月刊紙 MORGEN2005年9月号掲載)
著者情報
本木洋子
東京生まれ。著書に「日本文化キャラクター図鑑」シリーズ(2014年、玉川大学出版部)、『健康で生きたい』(2018年)『大海原の決闘 クジラ対シャチ』(2013年)『アンモナイトの夏』(2007年)『よみがえれ、えりもの森』(2003年)『おとなはなぜ戦争するのⅡ』(共著、2009年)(いずれも新日本出版社)などがある。日本児童文学者協会会員。
茂手木千晶
日本児童文学者協会会員。著書に「おとなはなぜ戦争するの」(新日本出版社)がある。

いま、地球の子どもたちは―2015年への伝言1 売られていく子どもたち 貧困と飢餓
定価2,200円
(本体2,000円)
2005年4月