
芥川は、大逆事件で政府を弾劾した徳冨蘆花の「謀叛論」演説を聴いたか−−。著者は、芥川の中国視察旅行や関東大震災での見聞、新発掘された友人・知人の日記などの新資料を駆使し、時代や社会と格闘しながら現実をリアルに見つめていた作家の実像を浮かびあがらせる。「羅生門」などで人気の芥川に新たな光をあてた注目の評伝。
目次や構成
[目次]
- はじめに―なぜいま、芥川か
- 第Ⅰ章 芥川龍之介の時代
- 一 反動の時代
- 二 三つの戦争
- 三 震災と金融恐慌
- 第Ⅱ章 革命へのあこがれ
- 一 社会主義への関心
- 二 若き芥川の歴史認識
- 三 「項羽論」と「義仲論」
- 第Ⅲ章 「謀叛論」とその影響
- 一 蘆花の演説「謀叛論」
- 二 自由と開放の願い
- 三 「謀反論」の受容諸相
- 第Ⅳ章 自己解放
- 一 謀叛の精神
- 二 「羅生門」の登場
- 三 反逆の論理
- 第Ⅴ章 芸術至上から社会認識へ
- 一 作家出発時の芥川龍之介
- 二 「地獄変」の試み
- 三 新カント派と社会思想の摂取
- 第Ⅵ章 中国視察旅行
- 一 新たな歴史の胎動
- 二 章炳麟と桃太郎
- 三 排日の落書き・反日感情
- 第Ⅶ章 反戦小説
- 一 過小評価
- 二 表現の自由への干渉
- 三 芥川とプロレタリア文学
- 第Ⅷ章 関東大震災への眼
- 一 芥川の震災記録
- 二 健全なる作家魂
- 三 自警団での徹宵警戒
- 第Ⅸ章 皇国史観批判
- 一 強い社会的関心
- 二 愛国将軍金応瑞
- 三 読み手の歴史認識
- 第Ⅹ章 芥川の闘い
- 一 時代と社会との格闘
- 二 鋭い先見性
- 三 生存への問いかけ
- あとがき
- 索引
著者情報
関口安義
1935年埼玉県生まれ、早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。都留文科大学教授、文教大学教授を歴任。主な著書に『芥川龍之介』(岩波新書、1995)、『芥川龍之介とその時代』(筑摩書房、1999)、『芥川龍之介の歴史認識』(新日本出版社、2004)、『キューポラのある街 評伝早船ちよ』(新日本出版社、2006)、『世界文学としての芥川龍之介』(新日本出版社、2007)、『評伝 矢内原忠雄』(新教出版社、2019)ほか多数

芥川龍之介の歴史認識
定価1,980円
(本体1,800円)
2004年10月