
吉永小百合をアイドルにした『キューポラのある街』。鋳物の町・川口を舞台に、中学生の非行、家庭の貧困や在日朝鮮人帰還問題などを感動的に描き、早船ちよは人気作家の地位を不動のものにした。本書は、雪深い飛騨高山での生い立ち、夫・井野川潔との二人三脚ぶりなど、作家の作品と生涯を克明にたどった本格的評伝。
目次や構成
〔目次〕
- はじめに
- 第一章 飛騨古川と高山
- 出生の地、飛騨古川
- 早船ちよ館
- 成育の地、高山
- 高山町立女子尋常高等小学校
- 第二章 「幼な書き」の時代
- 恩師藤井嘉蔵
- 大正デモクラシーと綴方教育
- 学校文集『銀のすゞ』
- 新聞入選と『鑑賞文選』への投稿
- 第三章 峠を越えて湖へ
- 金融恐慌の中で
- 飛騨毎日新聞社入社
- 友情と恋愛
- 湖の地へ
- 第四章 湖から町へ
- 片倉製糸に就職
- 製糸労働者
- 小砂丘忠義
- 上京
- 第五章 結婚と新生活
- 出会い
- 井野川潔
- 青年教師早船斌男
- 結婚生活
- 第六章 疎開と戦後生活
- 戸塚村への疎開
- 敗戦と執筆活動の再開
- 『埼玉文学』と「うたごえ」
- 生と死
- 第七章 キューポラのある街
- 埼玉県川口市
- 『キューポラのある街』の登場
- 構成と内容
- 作品生成と読者の反応
- 第八章 人気作家として
- 映画「キューポラのある街」
- 内外での大きな反響
- 劇化とテレビ化
- 一躍人気作家に
- 第九章 児童文化運動とともに
- 『新児童文化』の創刊
- 『子ども世界』の時代
- 児童文化運動への情熱
- 二つの六部作
- 第十章 故郷への回帰
- ふるさと再発見
- 一連の故郷もの
- 書くことの重み
- 美作女子大学教授として
- 附章 死とその前後
- あとがき
- 索引
著者情報
関口安義
1935年埼玉県生まれ、早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。都留文科大学教授、文教大学教授を歴任。主な著書に『芥川龍之介』(岩波新書、1995)、『芥川龍之介とその時代』(筑摩書房、1999)、『芥川龍之介の歴史認識』(新日本出版社、2004)、『キューポラのある街 評伝早船ちよ』(新日本出版社、2006)、『世界文学としての芥川龍之介』(新日本出版社、2007)、『評伝 矢内原忠雄』(新教出版社、2019)ほか多数

キューポラのある街 評伝早船ちよ
定価1,980円
(本体1,800円)
2006年3月