
ライブドア、村上ファンド……小泉内閣の「構造改革」路線のもとで次々と起こる不正事件や、格差の広がり。こうした背景には、「新自由主義」とよばれる弱肉強食の経済思想があり、政治、社会、教育・文化などさまざまな分野で影響を広げている。この内容をそもそもから、実践的に役立つように、分かりやすく解明する。
目次や構成
〔目次〕
- はじめに
- 第1章 「新自由主義」とは何か(その1)
- ライブドア1/小泉「構造改革」―批判する新しい動きも
- ライブドア2/新たな金融貴族―「寄生虫」とマルクス
- ライブドア3/「努力」を計る新しい尺度―スタートから不平等
- 市民社会/ルールとモラル―スミスの言う"共感"とは
- 市場原理主義1/賭博も麻薬も―まかせれば万事良し?
- 市場原理主義2/「株式資本主義」化―大企業の要求にそって
- マネタリズム/「貨幣原理主義」へ―"カネはずばらしい"
- 市場原理的支配/労働者を競争させ―低賃金・長時間労働続ける
- 福祉も、教育も、環境も/「官から民へ」―目先の効率化一本やり
- 格差社会/グローバル化が拍車―低所得再分配に攻撃
- メインストリーム1/米国のシカゴ学派―国際的潮流の総本山
- メインストリーム2/国際的背景―財政危機など矛盾の累積
- ルーツ/反社会主義―ソ連崩壊を追い風に
- グロ−バル化/多国籍企業の利益―国内のルールを改廃する
- ワシントン・コンセンサス/中南米―市場原理で経済疲弊
- ネット社会1/カジノ資本主義―投機的活動を野放しに
- ネット社会2/顔の見えない分業―「自由の拡大」の錯覚
- リバタリアリズム/民族主権の軽視―軍拡を強権傾斜の矛盾
- 第2章 「新自由主義」とは何か(その2)―質問に答えて
- 「お店屋さんごっこ」と株教育
- 農業と「新自由主義」
- 文化と「新自由主義」
- ノーベル経済学賞と「新自由主義」
- モンペラン協会とは
- サッチャー政権の「新自由主義」
- スミスの「市民社会論」とマルクス
- 第3章 「新自由主義」の基本的特徴をどうつかむか
- 世界的に、さまざまな特徴で現れている「新自由主義」
- 階級的な性格―「多国籍企業化した大資本の利益を代表」
―それは市場原理をグローバルな世界に要求する - 「新自由主義」イデオロギーと資本の搾取方法・蓄積様式の変化
- 「イデオロギーとての新自由主義」と経済政策との関係
- 第4章 「新自由主義」は、労働者をどう扱うか
- 戦後日本の歴史で、かつてない「労働のあり方の破壊」
- 大リストラ=「大合理化」の背景
- 市場原理主義による「労働市場改革論」
- 「新自由主義」の労働経済論―ルーツは「人的資本」理論
- 労働組合を敵視し、労働者の抵抗をおさえつける「新自由主義」
- 「新自由主義」の独占擁護論―シカゴ学派の「産業組織論」
- 第5章 古典的な自由主義と「新自由主義」は、どう違うのか
- ブルジョアジーの政治思想としての古典的な自由主義思想
- トーマス・ヒル・グリーンの「新自由主義」と河合栄治郎
- モンペラン協会とハイエク
- 1960年代から70年代へ。1980年代以降
- 「新しい」(neo−)の意味について
- 第6章 なぜ「新自由主義」の影響が広がったのか
- 前史―日本の「新自由主義」の系譜
- 「新自由主義」による90年代のイデオロギー的再編
- 小泉内閣と「新自由主義」経済路線
- 反撃の開始
- 第7章 日本的「新自由主義」イデオロギーと、どうたたかうか
- 綱領的な観点から、実践的な運動と結びつけて
- 広く深い視野に立って、連帯と共同の運動を
- イデオロギー的な全体状況を把握することの重要性
- 理論的な前進のために
―『資本論』の研究と、いわゆる「メインストリーム」の研究
- (補論) 「市場経済」とは何か―理論的メモ
- 「市場経済」の概念についてのメモ
- 「市場経済」と「資本主義」の関係についてのメモ
- 「資本主義的市場経済の限界」についてのメモ
著者情報
友寄英隆
1942年、沖縄県生まれ。労働者教育協会理事。一橋大学経済学部卒業、同大学院修士課程修了。月刊誌『経済』編集長などを歴任。 最近の著書は次の通り。『デジタル社会とは何か』(2022年、学習の友社)、『「人新世」と唯物史観』(2022年、本の泉社)、『「人口減少社会」とは何か――人口問題を考える12章』(2017年、学習の友社)、『アベノミクス崩壊』(共著、2016年、新日本出版社)、『アベノミクスと日本資本主義――差し迫る「日本経済の崖」』(2014年、新日本出版社)。

「新自由主義」とは何か
定価1,650円
(本体1,500円)
2006年8月