
AIとは何か、その現在と資本主義、そして未来社会
人間とAI 社会はどう変わるか
友寄英隆=著
生成AIは私たちの生活・社会をどう変える? AIは人の心の働きに近づく?――そんな気になる話題を科学的社会主義の立場で掘り下げました。AIのしくみと限界、労働・経済・メディア・政治・教育などへの影響、未来社会での可能性、ルールの必要性など、今のうちに知っておきたいテーマをわかりやすく論じた一冊です。
目次や構成
<目次>
- 第I部 AIとは何か——理論的AI論
- 第1章 AIの定義とイメージ
- 1 AI自身の自己紹介
- 2 AI研究者によるAIの定義——AIの目指している目標
- 3 AI研究の二つの立場——「強いAI」と「弱いAI」
- 4 「特化型AI」と「汎用型AI」
- 5 「超人類」を想定するシンギュラリティ
- 6 AIの広範な応用分野、多様な形状
- 7 AIサービスの物理的、技術的基盤——プラットフォームとデータセンター
- 8 まとめ——AIのイメージと定義(目的)を図に表わす
- コラム AIの始祖——アラン・チューリング
- 第2章 生成AIとは何か
- 1 「生成AIとは何か」——生成AI自身の自己紹介
- 2 生成AIを実際に利用してみる
- 3 生成AIの発展過程——アルゴリズムと技術的基盤
- 4 AIのアルゴリズムの限界
- 5 生成AIの技術的特質とリスク
- 6 LLMの「汎化能力+α」とハルシネーション
- コラム ノーベル賞、ニューラルネットワーク、深層学習
- 第II部 AIと人間——体験的AI論
- 第3章 AIは人間の知的活動をどこまで機械化できるか——《知・情・意》のうちの「知」の領域
- 1 まず知的ゲームから始まった——AIによるディープラーニング(深層学習)
- 2 自動翻訳——海外旅行(会話)、海外文献(読書)
- 3 AIによる名画の修復——モネ「睡蓮、柳の反映」
- 4 AIと歴史学・人文科学——欠落・破損した資料の修復
- 5 AIによる顔認証——人物プロファイルの危険性
- 6 医者、弁護士、研究者などの仕事——エキスパート・システム
- 7 AIと企業の経営判断、金融取引、銀行経営
- コラム AIの進化は知的所有権制度の危機をもたらす
- 第4章 AIは人間の心の世界をどこまで機械化できるか——《知・情・意》のうちの「情」の領域
- 1 美空ひばりと夏目漱石の“AI復活”
- 2 一人芝居「ソーホーのマルクス」
- 3 「機械人間」オルタに会いに行く
- 4 AIロボットとの恋愛はできるか?
- 5 癒し系の介護ロボット(メンタル・コミット・ロボット)
- 6 認知症とAI——人間の記憶の「機械化」
- 7 AIと「人間の生と死」——類的存在としての人間
- コラム AIに心は宿るのか——究極の問い
- 第5章 AIロボットとの共働と「疑似自律性」の罠——《知・情・意》のうちの「意」の領域
- 1 お掃除ロボット——限定的用途のAIから低汎用的用途のAIへ
- 2 AIロボットの発展と「疑似自律性」
- 3 生成AIとAIエージェント——「疑似自律性」の罠
- 4 自動運転車の拙速な実用化
- 5 産業ロボットと未来の工場
- 6 ロボットと労働者の共働(collaboration)
- 7 人間がスイッチを切れるAIロボット——人間と共働するAI
- コラム ブルックスの「知能の身体性」を重視するAI理論
- 第6章 AIが進化しても人間は負けない、決して負けてはならない
- 1 二つのタイプの「AI脅威論」
- 2 人間は身体を持った生命体である——人間の認知能力と知的判断力は広く深い
- 3 人間は社会を持っている
- 4 人間は歴史を持っている
- 5 人類は文明という財産を持っている
- コラム 「AI脅威論」への二つの対応——資本主義社会での開発・利用は「厳格なルール」が必要
- 第Ⅲ部 AIと社会——社会的AI論
- 第7章 AIと科学・技術
- 1 生成AIの開発を支えた諸要因
- 2 AIと量子物理学、核兵器とAI兵器
- 3 AIと数理科学
- 4 情報科学——「通信科学」から包括的な情報科学へ
- 5 ナノテクノロジーと半導体製造装置
- 6 AIと脳科学、生命科学、認知科学、疫学
- 7 AIと宇宙開発、軍事利用
- 8 AIの研究・開発の国際競争——米中両国の覇権をめぐって
- 9 AIを利用した科学・技術の発展
- 10 AIが「人間と自然の物質代謝」に与える影響
- コラム 将来の量子コンピュータとAIの研究
- 第8章 AIと社会科学——経済学の課題を中心として
- 1 生成AIと言語活動
- 2 AIと労働、肉体労働と精神労働——搾取制度の基盤
- 3 デジタル化された労働(コンピュータ労働)の特徴と影響
- 4 賃金論——IT技術者と低賃金労働者との格差
- 5 労働時間の短縮
- 6 AIが資本主義の構造に与える影響
- 7 世界各国で「新たな寡占体制」の形成
- 8 AIと資本主義の変革、二つの道のたたかい——「新自由主義」か民主的な「福祉資本主義」か
- コラム 未来社会とAIの可能性
- 第9章 AIと政治
- 1 選挙と偽情報
- 2 監視国家と治安体制
- 3 生成AIは「体制擁護の道具」になる危険がある
- 4 IT大企業のプラットフォームの役割
- 5 社会変革の理論
- コラム 直接民主主義の可能性——台湾の場合
- 第10章 AIと教育
- 1 GIGAスクール構想とは何か
- 2 文科省の「生成AIの利活用」のガイドライン
- 3 劣悪な教育条件の矛盾——教師の過重労働、教師不足、家計負担
- 4 新自由主義教育の矛盾——競争主義、成果主義、自己責任
- 5 拙速なICT化は矛盾を深める
- 6 「AIの機械学習」と「人間の学習」の根本的違い
- コラム AIの「アシスタンスジレンマ」
- 第11章 AIとメディア
- 1 AIの進化とメディア産業との関係
- 2 AI企業とメディア業界のたたかい
- 3 インターネットメディアの発展
- 4 SNSの発展、その特徴
- 5 SNSの可能性
- 6 SNSのリスクと危険性
- 7 SNSへの公的規制
- コラム SNSへの規制の方法
- 第12章 AIとルール
- 1 長期的な取り組みが必要になる
- 2 技術の研究開発と厳格なルールの関係
- 3 エルシー(ELSI)——倫理的規制と法的規制
- 4 国際的枠組み——「G7広島プロセス」と「AIパリ・サミット」
- 5 EUのAI法
- 6 米国は大統領令で対抗
- 7 日本——研究・開発優先で「前のめり」の日本政府
- 8 国連とAI——ハイレベル諮問機関
- 9 AI兵器の禁止交渉
- コラム 人類史の教訓
- 第13章 AI、デジタル社会にどう向きあうか
- 1 そもそも「デジタル」とは何か——二つのことをしっかり理解する
- 2 「デジタル技術」には利便性と危険性の両面がある
- 3 「デジタル社会」には厳格な「社会的ルール」が必要
- 4 デジタル化に現実社会の困難な課題を“丸投げ”してはならない
- 5 デジタル技術を悪用する「監視国家」「大軍拡計画」に断固反対する
補論1 メタバースとAI——メタバース体験記から
補論2 AIと「資本の生産力」
あとがき
人名索引
AI関連語索引
- 第7章 AIと科学・技術
- 第3章 AIは人間の知的活動をどこまで機械化できるか——《知・情・意》のうちの「知」の領域
- 第1章 AIの定義とイメージ
はじめに——AIをなぜ研究するのか
用語解説
著者情報
友寄英隆
1942年、沖縄県生まれ。労働者教育協会理事。一橋大学経済学部卒業、同大学院修士課程修了。月刊誌『経済』編集長などを歴任。 最近の著書は次の通り。『デジタル社会とは何か』(2022年、学習の友社)、『「人新世」と唯物史観』(2022年、本の泉社)、『「人口減少社会」とは何か――人口問題を考える12章』(2017年、学習の友社)、『アベノミクス崩壊』(共著、2016年、新日本出版社)、『アベノミクスと日本資本主義――差し迫る「日本経済の崖」』(2014年、新日本出版社)。

人間とAI 社会はどう変わるか
定価2,420円
(本体2,200円)
2025年7月