
「医療崩壊」に立ち向かう力は「地域」にあった
地域医療再生の力
中川雄一郎=監修 非営利・協同総合研究所 いのちとくらし=編
住民に日夜向かい合う地域の医療機関の実情を、病院経営問題も含め多面的に分析し、その中に再生へのさまざまな胎動を見いだした一冊。「非営利・協同」を掲げた医療機関、医師会を含む幅広い医療人が、地域の患者の姿を見つめながらすすめる丁寧な努力から、医療と政治に、今何が求められているかが見えてきます。
目次や構成
〔目次〕
- はじめに 中川雄一郎
- 第1章 自治体病院はどこへ行く 村口 至
- 自治体病院の行く手を決めている総務省・厚労省の二つのガイドラインと自治体財政事情
- 自治体病院の特徴
- 再生への道は?
- 第2章 京都における医療機関の動向から地域医療の再生を考える 吉中丈志
- 日本の医療提供体制の変遷と特徴
- 京都府にみる医療機関再編の特徴
- 病院大規模化の特徴
- 医療技術と医師について
- 民医連の病院や診療所の位置
- 医療提供体制構築政策の転換が必要
- 第3章 東京における開業医と住民運動の連携 前沢淑子
- 東京の医療の現在
- 医療の後退をくいとめる都民の力
- 地域医療を支える開業医
- 第4章 佐久総合病院と地域医療 石塚秀雄
- 佐久総合病院の特徴と現状
- 労働組合と協同の力
- 第5章 明日の見えない医療機関経営――経営論点と処方箋 坂根利幸
- 医療の法制度などと経営論点
- 医療機関経営再生の鍵
- 結びにかえて――地域医療と「非営利・協同」 杉山貴志
「はじめに」より
年間210億円の収入があり、経営母体のJA長野厚生連からの補填をまったく必要としない佐久総合病院にさえ、このような「苦渋の選択」を迫り、また他方では療養病床の削減を計画する政府・厚労省の保険・医療政策とは、私たち国民にとって何であるのか、あらためて考えなければなりません。おそらく――公私を問わず――他の地方や都市部の病院・医療機関もこの「苦渋の選択」に直面し、苦しんでいることでしょう。そうであれば、「セイフティー・ネットの一つとしての保健・医療の実質化」という国民的な視点から、政府・厚労省の政策的背景と「地域医療の崩壊」の実態とを分析し、「地域医療の再生」の方向性を見いだす努力がますます求められることになります。本書は、このような意図から編まれた、「地域医療の再生」のための国民的ミッションの役目を果たそうとするものです。
著者情報
中川雄一郎
1946年生まれ、明治大学政経学部教授。専攻はNPO(非営利組織)論、社会的企業論、社会的協同組合論、コミュニティ福祉論など。『イギリス協同組合思想研究』『労働者協同組合の新地平』(日本経済評論社)、『生協は21世紀に生き残れるのか』(大月書店)など著書・訳書多数。

地域医療再生の力
定価2,200円
(本体2,000円)
2010年1月
非営利・協同総合研究所 いのちとくらし
2003年設立。内外の医療・福祉、非営利・協同の実践の調査、政策的提言活動にとりくむ特定非営利活動法人。

地域医療再生の力
定価2,200円
(本体2,000円)
2010年1月