
住民からみて?マークの教育委員会。住民や学校現場の悩みや要求を吸い上げる住民自治の機関としてどう活性化していくのか。2014年の教育委員会制度「改革」での国会答弁・政府文書を駆使して、何が変わり、どうすれば子どもに寄り添う教育ができるかを論じます。教科書採択、政治と教育の関係などにも言及した教職員、地方議員必携の書。
目次や構成
まえがき 3 第一部 教育委員会は残った 15 1 教育委員たちの手に残った意思決定権限 17 教育委員会とは 17 首長と教育委員会、どちらが偉い? 22 2 なぜ教育委員会ができたのか──教育委員会誕生の歴史 24 戦前から戦後への転換の歴史 24 教育委員会制度の「三つの根本方針」 27 3 教育委員会の形骸化と安倍政権の廃止論 31 形骸化される教育委員会 31 最後に残された独立性 35 安倍政権による制度廃止論 36 制度廃止の二つの動機 38 4 制度廃止から制度改悪へ 43 中教審審議での紛糾と「与党合意」 43 なぜ廃止でなく改悪となったのか 47 第二部 改正地教行法の矛盾 53 (一) 改正地教行法の三つの新たなしくみ 54 1 首長の「大綱」策定権──勝手に何でも書き込める 55 首長はあらゆることを書き込める 58 教育長にも教育委員にも「大綱」に「意を用いなければならない」 59 国の計画を「参酌」する 60 2 総合教育会議 61 「大綱」制定のための唯一の必須条件 62 「協議」と「調整」──調整したことには尊重義務 63 3 新「教育長」──スーパー教育長は、首長に弱い 64 改正前の教育委員長と教育長を一本化した新「教育長」 64 教育委員会の下で働いていた者が教育委員会の代表になる 66 (二) 矛盾の露呈──国会での法案審議 69 1 「大綱」をめぐって 70 2 総合教育会議について 77 3 新「教育長」について 85 新「教育長」権限の強さ 85 続いた文科大臣の誤答弁 89 「ふさわしくない」事例などを通知で周知徹底へ 90 第三部 教育委員会の改革 93 1 法改正と教育委員会の基本を理解する 95 新制度の濫用を許さず、改革の土台をつくる 95 国の通知文書で“教育委員は意思決定をおこなう責任者”と明記 97 教育委員会の「三つの根本方針」は「変わらない」と国会答弁 98 教育委員会法成立時の大臣の演説 99 2 法改悪で加わった三つの要素の暴走をふせぐ 101 新教育長──暴走しない制度運営と新教育長の選出 102 教育委員会の委員による教育長に対するチェック機能の強化 103 大綱──首長による介入を防ぐ。「民意反映」は首長だけでない 104 総合教育会議──首長と教育委員会は対等平等、教科書や人事はNG 107 教育の民意は、教育委員会をつうじても 110 3 直接、住民の声を聴き、教育施策をチェックする教育委員会を 111 教育委員たちのかかえる困難 111 子ども、保護者、教職員、住民の声を聴く 113 国の「通知」でも住民に耳を傾ける改革を促している 115 「適切なすばらしい提案」 117 4 教育委員会が役割を果たすための体制をつくる 118 5 憲法に基づいて、教育の自由と自主性を守る行政に 122 指導助言行政は、命令監督でないことをはっきりさせる 123 土台には憲法がある──最高裁学力テスト判決 125 6 子どもの権利条約を生かす教育委員会 127 豊かな子ども期のための条約 127 子どもの権利から見た日本の学校教育 129 教育委員会を子どもの権利のための機関に 130 7 国の教育行政の改革 133 「円筒型組織」 133 すぐれた内容でも強制しないのが教育行政 134 強制は自民党の政治的圧力から 135 国の教育行政も一般行政からの独立を 137 補論① 教科書採択と教育行政 141 1 教育委員会に採択権限があるとはどういうことか 142 採択に不可欠な「綿密な調査研究」 143 教科書採択は子どものための教育的選択 144 世界のルールも教員の役割重視 146 綿密な調査研究には、順位づけなどの評定も含まれる 148 教育委員会の熟慮と保護者・住民らの意見反映 149 2 新制度で首長は教科書採択に関与できるのか 152 3 育鵬社系教科書は、もっとも「教育基本法に合致した教科書」なのか 156 育鵬社系教科書の言い分 156 基準点としての宮沢官房長官談話 158 南京事件も「慰安婦」も「あった」が政府の見解 160 南京事件、「慰安婦」を記述している教科書は教基法と合致 162 改正教基法で特定の愛国心を強調することは憲法上許されない 163 補論② 大津市いじめ自殺事件と教育委員会制度 165 大津市いじめ自殺事件 166 教育委員会の責任の所在 167 法的な責任があっても、実際には問われない甘さ 169 首長に権限を集中しても解決しない 170 解決は、教育委員会の原点に立った具体策でこそ 172 補論③ 政治は教育内容についてどこまで発言できるか 175 何も言えないわけではない 175 不当な介入とならないように配慮する必要がある 177 個別のケースのアウトライン 180 巻末資料 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律について(通知)
著者情報
藤森毅
1960年、東京生まれ。東京大学教育学部卒業。日本共産党文教委員会責任者。著書に『教育の新しい探究』(2009年)、『いじめ解決の政治学』(13年)〔いずれも新日本出版社刊〕がある。

教育委員会改革の展望
定価1,760円
(本体1,600円)
2015年10月