
「君が代」の歌詞が、16世紀の僧・隆達による小歌の巻頭にあるものと同じなのはなぜか。隆達節に、自由な精神と平和の時代を読み取り、今日の「君が代」の扱いを批判する。ほか、軍人勅諭に関連した西周の思想の二面性、狂言に現れた農奴解放の時代、ミッキーマウスに見る大恐慌期の労働者の姿など、歴史への洞察が光るエッセイ集。
目次や構成
〔目次〕
- 狂言―自由・平等、平和の伝言
- 堺の地で「君が代」の謎を考える
- 祖父の手記と西周
―日本歴史へのわがこだわり - ミッキーマウスは失業者だった
おわりに
それは全く偶然に始まった。二年前のある日、私は何とはなしに新村出編『広辞苑(第四版)』(岩波書店)で「君が代」を見たところ、この歌詞は「江戸時代の隆達節の巻頭第一にあるものと同じく、さかのぼれば古今集には初句を『我が君は』とした歌がある」とあった。
隆達節も『広辞苑』から知った。「江戸時代の流行歌。泉州堺にある日蓮宗顕本寺の僧隆達(1527-1611)が創めた小歌。1600年頃に流行、近世小唄の源流をなした。隆達小歌。」
私自身振り返って、「君が代」の歌詞は古い和歌で、それに節をつけたもの程度の認識だったから、この年になるまで隆達節に始まることを知らなかったことにショックを受けた。我が無知に驚いてばかりはおられず、まずは隆達節のにわか勉強から始めたわけである。
(2 堺の地で「君が代」の謎を考える より)
著者情報
工藤晃
1926年生まれ。東京大学理学部卒業。元日本共産党衆院議員。『マルクスは信用問題について何を論じたか』『現代帝国主義研究』『混迷の日本経済を考える』(いずれも新日本出版社)など著書多数。

エコノミスト、歴史を読み解く 君が代、軍人勅諭から狂言、ミッキーマウスまで
定価1,540円
(本体1,400円)
2008年3月