
若者を「難民」化させる社会は、暴力と貧困が蔓延し、人々が思考停止させられ精神を病む社会でもある――プレカリアート運動に献身する作家・雨宮氏と、「九条の会」事務局長を務める文芸評論家・小森氏による討論の記録。生きづらさ、テロと戦争、バッシング社会、ネット心中など社会病理の本質と、それをこえてゆく思想を熱く語り合う。
目次や構成
〔目次〕
- はじめに 雨宮処凛
- 1 「90年代」から今が見えてくる
- 「ちびまる子ちゃん」と競争
- 「人生ごと人質に」とられて
- 「受験勉強なんか意味がない」
- リストカットとバンギャル生活
- フリーターの「自由」と現実
- 雇用の「規制緩和」ということ
- 脅かされる人間の尊厳と九条
- 政治の右傾化と「格差」、貧困
- 「豊か」とか「平和」とかいわれても
- サブカル、右翼、「大きな物語」
- 2 暴力と思考停止の世界で
- 「それをお前らが言うなよ」と
- 書くことで自分をすくい上げて
- 言葉を失った経験とバッシング社会
- 「恐怖と怒りは紙一重」がここでも
- 思考停止の背後にある欲望
- 新たな変革が求められる時代
- 3 貧困の蔓延と人々が精神を病む国
- 教育課程からの排除と背景
- 「不登校その後」と「氷河期」
- リクルート事件とフリーター
- 新自由主義は家族を利用する
- メンヘラーたちとデモで再会した
- 自傷の競い合い、ネット心中
- 「今を楽しむ」作法とその行方
- 自分でなく社会に怒りを向ける
- 4 無条件に生存を肯定する運動
- 根本的にひっくり返す言葉
- 自分を肯定できないと怒れない
- 競争原理と「自己責任」論の土壌
- くすぶる罪障感と「免責共同体」
- 「人は一人で生きていける」のか
- 恋人、友達ではなく「同志」
- 役立たずでものさばっていい
- 「幸せのハードル」を下げるとは
- 贈与の原理の具体化のために
- おわりに 小森陽一
著者情報
小森陽一
1953年生まれ。<BR> 北海道大学文学部卒業、同大学院文学研究科博士課程修了。成城大学助教授を経て、現在東京大学大学院総合文化研究科教授。<BR> おもな著書<BR> 『構造としての語り』(新曜社)<BR> 『日本語の近代』(岩波書店)<BR> 『ポストコロニアル』(岩波書店)<BR> 『日露戦争スタディーズ』(紀伊国屋書店)<BR> 『天皇の玉音放送』(五月書房)<BR> 『歴史認識と歴史小説―大江健三郎論』(講談社)<BR> 『研究する意味』(東京図書)<BR>
雨宮処凛
1975年生まれ。作家。『生き地獄天国』(ちくま文庫)、『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(上下巻、講談社)『プレカリアート』(洋泉社新書)、『雨宮処凛の闘争ダイアリー』(集英社)、『「生きづらさ」について』(光文社新書)など著作多数。

生きさせる思想 記憶の解析、生存の肯定
定価1,540円
(本体1,400円)
2008年12月