
夏目漱石の弟子、シュールな小説世界が印象的な内田百閒は、それとは裏腹に借金しまくる人だった。いったいどういうこと? 百閒マニアのエコノミストと漱石研究の第一人者が語り合ったら、話題は二人の作家の人物・作品から今日のグローバル経済や新型コロナウイルスまで。百閒没後50年(2021年)に送る、楽しくて元気の出る一冊。
目次や構成
<目次>
- はじめに(→試し読みあり。PDFページをご覧ください)
- 一 漱石・百間の珍問答が映すカネとヒト 小森陽一✕浜矩子
- 漱石先生から借金する弟子・百間
- 借金は人を「信用」する行為(である場合も)
- 『道草』の中のカネ、質屋の話
- 高利貸しと質屋の違いは人間関係の違い
- 百間に学ぶ通貨論とダークな漱石先生
- 借金がトラウマにならなかった人
- ヒトのカネ化とカネのヒト化
- 漱石はカネが怖かった
- 度胸と愛嬌の絶妙なバランス
- グローバル時代は人を信頼しないと
- 破グローバル化と超グローバル化
- 漱石にとっての解放と人の「魂」
- 『明暗』をめぐる漱石と百間の呼応
- 二 二人の時代と「コロナの時代」
- 漱石文学の中の感染症 小森陽一
- 新「出エジプト記」──我らは熱夢から出でて共に生きる世界に役立てるか 浜矩子
-
コラム
- (小森)
- 帝国主義の時代を漱石はどう見ていたか
- 『道草』と漱石の生い立ち
- 樋口一葉と質屋
- 漱石の湯河原滞在について
- 女性の職業的自立と近代文学
- 関東大震災と文学
- 書いたものを金に換える
- 『道草』の中の「笑い」と漱石
- 『明暗』の新境地について
- (浜)
- 異界との境界面が薄い百間ワールド
- サブプライムローンの証券化はこうして蔓延した
- ヒト・モノ・カネの関係変調──その歴史をたどれば
- 「キャッシュレス化」にご用心
- カネを貸したい人の願いをかなえてあげる
- カネの正しい「天下の回り方」
- アホノミクスからスカノミクスへ──二十一世紀版大日本帝国づくりはどうなる?
- 知的強靱さの源泉はいずこに?
- グローバル時代を狂わす自己責任論を排す
- 委ねて託す魂こそ、積極的平和の礎
- あとがき
著者情報
小森陽一
1953年生まれ。<BR> 北海道大学文学部卒業、同大学院文学研究科博士課程修了。成城大学助教授を経て、現在東京大学大学院総合文化研究科教授。<BR> おもな著書<BR> 『構造としての語り』(新曜社)<BR> 『日本語の近代』(岩波書店)<BR> 『ポストコロニアル』(岩波書店)<BR> 『日露戦争スタディーズ』(紀伊国屋書店)<BR> 『天皇の玉音放送』(五月書房)<BR> 『歴史認識と歴史小説―大江健三郎論』(講談社)<BR> 『研究する意味』(東京図書)<BR>

大借金男・百閒と漱石センセイ
定価1,980円
(本体1,800円)
2020年11月
浜矩子
1952年生まれ。一橋大学経済学部卒業。エコノミスト。 75年三菱総合研究所入社後、同所初代英国駐在員事務所所長、同社政策・経済研究センター主席研究員などを経て、2002年から同志社大学大学院ビジネス研究科専門職学位課程教授。著書に、『「通貨」の正体』(2019年、集英社新書)、『ついに始まった日本経済「崩壊」』(2018年、SB新書)、『「ポスト真実」の世界をどう生きるか』(共著、2018年、新日本出版社)、『どアホノミクスの断末魔』(2017年、角川新書)、『浜矩子の歴史に学ぶ経済集中講義』(2016年、集英社)など多数。

大借金男・百閒と漱石センセイ
定価1,980円
(本体1,800円)
2020年11月