
「成功事例」とされがちな日露戦争と「失敗事例」とされる日中戦争。これらに関連性はあるのか? そこに焦点を合わせると、日本の戦争の本質と実態が見えてくる。日本戦史研究で著名な山田教授がその核心部分を解き明かし、戦争の〈記憶〉の継承のあり方を示す。現在の改憲論を下支えする歴史修正主義の特徴と問題点も浮き彫りにする。略年表も付す。
目次や構成
- 第一部 近代日本はどんな戦争をおこなったのか
- 第一章 日露戦争とはどういう戦争だったのか
- 一 近代日本の国家戦略―日露戦争への道
- 二 日露戦争の実像と世界史的意味
- 三 日本陸軍の戦略:成功と失敗
- 四 日本海軍の戦略の成功と失敗
- 五 『坂の上の雲』の歴史認識の危うさ
- 第二章 満州事変と「満州国」の実態
- 一 「満州国」における「五族協和」の理念と実態
- 二 反満抗日運動と「討伐」の実態
- 第三章 日中戦争と南京事件の真実
- 一 アジア太平洋戦争の原因・重要な構成要素としての日中戦争
- 二 日中戦争の性格を浮き彫りにする南京事件の真実
- 第二部 今、問われる歴史認識と戦争責任
- 第四章 真珠湾攻撃とは何であったのか
- 一 真珠湾攻撃への道
- 二 一九四一年十二月八日における日本軍の軍事行動
- 第五章 戦争責任論の現在と今後の課題
- 一 戦争責任論の変遷
- 二 歴史修正主義の台頭
- 三 戦争責任論の課題:戦争の〈記憶〉の希薄化のなかで
- 第六章 「植民地支配と侵略」の計画性と国家の責任
- 一 「日本だけではない」「良いこともした」という言説の問題点
- 二 「アジアの独立に役立った」という言説の問題点
- 三 「領土的野心なし」という言説の問題点
- 第三部 歴史修正主義をどのように克服するか
- 第七章 日本は過去とどう向き合ってきたか
- 一 靖国神社問題と歴史認識
- 二 日本人にとって〈歴史認識〉とはなぜ大切なのか
- 第八章 政界における歴史修正主義
- 一 安倍晋三首相の歴史認識と「教育再生」
- 二 「河野談話」排除のうごきと二〇〇七年政府答弁書の問題点
- 三 「村山談話」排除のうごき
- 四 「宮沢談話」(近隣諸国条項)の撤廃と靖国問題
- 五 「安倍談話」の歴史認識:その特徴と問題点
- 六 戦後を否定する日本会議の虚構
著者情報
山田朗
1956年、大阪府生まれ。明治大学文学部教授、歴史教育者協議会委員長。主な著書に『日本帝国主義の満州支配』(共著、時潮社、86年)『昭和天皇の戦争指導』(昭和出版、90年)『大元帥・昭和天皇』(新日本出版社、94年)『外交資料近代日本の膨張と侵略』(編、新日本出版社、97年)『歴史教育と歴史研究をつなぐ』(編、岩波書店、07年)『日本近現代史を読む』(共著、新日本出版社、10年)『兵士たちの戦場』(岩波書店、15年)『近代日本軍事力の研究』(校倉書房、15年)『昭和天皇の戦争』(岩波書店、17年)、『日本の戦争:歴史認識と戦争責任』(17年)『日本の戦争Ⅱ:暴走の本質』(18年)『日本の戦争Ⅲ:天皇と戦争責任』(19年)『帝銀事件と日本の秘密戦』(20年、ともに新日本出版社)など多数。