
必ずしも軍事一色ではなかった昭和初期の日本。第一次世界大戦を教訓とした世界の軍縮世論なども背景に、「軍縮論」も大きな力を持っていた。ところが結局のところ、軍部の論理が優位を占めていく。「戦争と敗北」を回避するための軍縮の動きが、なぜ結実しなかったのか。直接・間接の立場にあった当事者たちの語りに耳を傾けた歴史検証の書き下ろし。
目次や構成
目次
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- プロローグーー「軍縮の中の軍拡」
- 第一章 軍拡支える法整備を急ぐ
- 1 第一次世界大戦の衝撃
- 2 軍需工業動員構想をめぐって
- 3 官民合同問題
- 4 軍需工業動員法制定と軍財間の合意形成
- 第二章 〝軍縮〟で軍近代化を目指す
- 1 総力戦論の登場と軍拡政策
- 2 高揚する軍縮世論
- 3 山梨・宇垣軍縮の断行と目的
- 4 軍近代化という名の軍拡
- 第三章 軍縮の時代に逆らう
- 1 国際軍縮問題の発生
- 2 陸軍の介入
- 3 軍縮反対論の論理
- 4 統帥権干犯問題
- 第四章 軍制改革をめぐって
- 1 深まる濱口内閣と軍部の対立
- 2 参謀本部の介入
- 3 政府・民政党の行政整理構想と陸軍の対応
- 4 若槻内閣の軍制改革問題とその帰結
- 第五章 武器輸出で軍拡を促す
- 1 日本陸軍の武器輸出と武器輸出商社
- 2 軍縮論と軍拡論の狭間で
- 3 陸軍統制下の昭和通商の位置
- エピローグーー〝昭和軍縮失敗史〟
著者情報
纐纈厚
1951年生まれ。山口大学名誉教授(同大学の副学長や理事も務めた)、現在、明治大学特任教授。著書に『「聖断」虚構と昭和天皇』(2006年)、『憲兵政治』(08年)〔ともに新日本出版社〕、『近代日本政軍関係の研究』(岩波書店)など多数。

戦争と敗北 昭和軍拡史の真相
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(本体2,200円)
2019年5月