
戦前期の戦争の時代に天皇中心の国体思想に迎合しない人々を徹底的に弾圧し、その人権や生命すら奪った戦前期の権力者たち。その彼らが時を経て生き残り、再び戦後日本で新たな国体思想を普及すべく、紀元節復活を目的とする「建国記念の日」を目指す。その旗振り役を担った特高課長・纐纈弥三を通して、戦前戦後を通観する、迫真の書き下ろし。
目次や構成
<書評情報>
- 朝日新聞(2020年12月19日付)<評者:保阪正康さん>
- 東京新聞(2020年12月20日付)<評者:太田昌国さん>
<目次>
- はじめに 戦争と弾圧は表裏一体ではないか
- Ⅰ 出生地と自分史を語る~国体思想の淵源~
- 第一章 岐阜県蛭川村と父秋三郎
- 1 出生地の風土と環境
- 2 父秋三郎と報徳思想
- 第二章 日記のなかの家族と弥三
- 1 家族史点描
- 2 弥三の社会観念
- Ⅱ 日本共産党弾圧を指揮する~三・一五事件の真相~
- 第三章 日本共産党弾圧の理由
- 1 警視庁特高課長に就任
- 2 三・一五事件の真相
- 3 関連資料の紹介と日本共産党
- 第四章 事件の評価と記憶
- 1 事件を伝える人々
- 2 強化される情報統制
- 3 犠牲者の実相と支援
- Ⅲ 戦争を内側から支える~官僚の戦争責任~
- 第五章 思想統制と思想動員
- 1 国体思想の注入
- 2 文部官僚時代の言動
- 第六章 新たな戦前の模索
- 1 生き残った特高警察たち
- 2 公職追放と解除
- Ⅳ 紀元節復活に奔走する~新たな戦前の開始~
- 第七章 旧特高官僚たちの国政参画
- 1 出馬の意欲
- 2 旧特高官僚たちの復権
- 第八章 戦前期日本への回帰
- 1 紀元節復活の背景
- 2 拍車かかる戦前回帰志向
- 3 新たな戦前の開始
- おわりに 平和と民主主義を実現していくために
- あとがき
- 纐纈弥三の略歴
著者情報
纐纈厚
1951年生まれ。山口大学名誉教授(同大学の副学長や理事も務めた)、現在、明治大学特任教授。著書に『「聖断」虚構と昭和天皇』(2006年)、『憲兵政治』(08年)〔ともに新日本出版社〕、『近代日本政軍関係の研究』(岩波書店)など多数。

戦争と弾圧 三・一五事件と特高課長・纐纈弥三の軌跡
定価2,420円
(本体2,200円)
2020年10月